Project/Area Number |
20K14344
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 12020:Mathematical analysis-related
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川越 大輔 京都大学, 情報学研究科, 助教 (30848073)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
|
Keywords | 逆問題解析 / 偏微分方程式論 / 積分方程式 / 数値解析 / スペクトル解析 |
Outline of Research at the Start |
本研究課題は, 次世代の非侵襲的断層撮影技術である拡散光トモグラフィ(Diffuse Optical Tomography (DOT)) に対する申請者の提案手法の実用化に向けた数学解析である. 申請者はこれまでに, DOT に関連する逆問題に対して実現可能と思われる解法を提案しており, 本研究課題では数値実験により申請者の逆問題解法の実現可能性を議論する. メタマテリアルを利用した観測データの高解像化を並行して検討するが, その前段階としてメタマテリアルと関連する境界積分作用素のスペクトルの解析に取り組む. これらの解析には2つの数理モデルが現れるが, それらの定量的な対応づけにも取り組む.
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は, 拡散光トモグラフィ (Diffuse Optical Tomography (DOT)) に対する研究代表者の提案手法の実用化に向けた数学解析である. DOT は近赤外光を用いた次世代の非侵襲的断層撮影技術であり, 定常輸送方程式と呼ばれる微分積分方程式の未知係数決定逆問題として数理モデル化される. この逆問題に対して研究代表者はこれまでに実現可能と思われる解法を提案しているが, 観測誤差の影響やデータの観測可能性の検討がまだ十分になされていない. 数学解析の視点でこの検討を行い, 研究代表者の提案手法による DOT の実現可能性を明らかにすることが本研究の目的である. 令和3年度には2次元領域での数値実験を実施し, 散乱の影響が小さい場合には研究代表者提案手法が機能することが確認された. 令和4年度はこの数値実験を3次元領域の場合に実施し, 2次元の場合と同様に断層撮影技術として機能することが確認された. また, 数値計算の精度と関連して, 定常輸送方程式と同様の微分積分方程式である定常線型 Boltzmann 方程式の解の正則性を精査した. 領域が十分小さくその境界のGauss 曲率が一様に正の場合には解が Sobolev 空間 H^1 に属するが, 領域が薄い平行平板の場合には解の偏導関数の特異性に起因して解が H^1 に属さないことが確認された. この偏導関数の特異性は境界の平坦さから生じるもので, 有界領域であっても境界に平坦な部分が存在すれば同様の特異性が生じることが予想される. 本研究では現象や観測のスケールを考察することが重要と認識しているが, それと関連して楕円型正則化の収束評価を精密に与えた. この収束評価は境界条件に依存するもので, 本研究課題に適用する際にはそこで課される境界条件に対する注意が必要であることが分かった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究協力者である藤原宏志准教授により, 領域が3次元でかつ拡散の影響が小さい場合にも, 定常輸送方程式の境界値問題の解の不連続点におけるジャンプ量を倍精度環境下の数値実験で捉え, さらにこのジャンプ量から DOT に関連する係数を数値的に再構成することに成功した. 加えて, 研究代表者の提案手法では係数の不連続面が平坦な部分を持たないことが仮定されていたが, この仮定を外した場合に現れる例外的な解のジャンプ量は逆問題の視点からは無視できることが確認された. なお, 3次元領域の数値計算は速度変数と合わせて5次元の大規模問題となり, そこに多くの時間を要したため, 年度当初予定していた直進光と散乱光を分ける数値計算スキームの実装は完了しなかった. また, 散乱が強い場合には光子の伝播が拡散方程式により数理モデル化され, その拡散方程式は輸送方程式のある種のスケール極限により得られることが知られているが, 境界の近傍では境界層が発生するため, 境界値問題としての関係性はまだ完全には理解されていない. この点を明らかにするため, 境界層が現れる典型例である, 定常移流方程式の特異摂動問題の収束について考察した. 本来の問題意識から逸れるものの, 斉次 Neumann 条件を課した場合には境界層が弱くなることが確認され, この場合に限って収束評価を与えることができた. この点を踏まえて輸送方程式のスケール極限問題を再考したいが, そこにはまだ至っていない. 年度当初には境界の摂動に対する Neumann--Poincar\’e (NP) 作用素のスペクトルの変化を研究することも予定していたが, 適用を検討していた Whitney 位相は各点での摂動を考察するのに対して, 本研究課題では境界の大域的な摂動を考察する必要があるため, この方向性での研究の見通しは立たなかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は, 1.研究代表者提案手法の数値実験, 2.メタマテリアルを利用した観測データの高解像化手法の提案, 3.スケールの異なる逆問題の関連性の精査, の3つを小課題として設定し, 特に小課題2.ではその前段階として NP 作用素のスペクトルの解析に取り組む. 小課題1.については, 直進光と散乱光に分けた数値計算スキームの実装に挑戦する. これにより, 散乱の影響が大きい場合に研究代表者提案手法の妥当性を検討する. これと並行して, ラットの実物データ等を用いた数値実験も実施し, 現実問題に即した実現可能性を検討する. 小課題2.については, これまでに得られた予想を数学的に記述する方法を継続して模索する. また, 従来の解析では Laplace 方程式の NP 作用素を主として考察してきたが, Helmholtz 方程式等の他の楕円型作用素の NP 作用素についてもスペクトルの解析を行う. 小課題3.として, 散乱の影響が強い場合における拡散方程式による数理モデル化の妥当性を輸送方程式のスケール極限により精査する. その際には境界層の解析が不可欠と考えているが, その点についての洞察を得るために移流方程式の楕円型正則化についても継続して考察する. なお, 本年度は本研究課題の最終年度であり, 本研究を通じて得られた知見を共有するために, 非適切性に焦点を当てた逆問題の研究集会の開催を企画している.
|