Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
膵臓における膵β細胞への分化機構の解明は、患者数が増加の一途を辿っている糖尿病の様々な病態の解明や治療法の開発に繋がることが期待されるが、膵組織特異的幹/前駆細胞(膵幹/前駆細胞)の明確な同定には未だ至っていない。本研究では、高い増殖能を指標に申請者が単離・同定に成功したマウス新生仔膵由来の膵幹/前駆細胞候補細胞を用い、その細胞の分子レベルでの多角的解析及び膵β細胞への分化能の評価を通して、分化機構の解明を目指す。平成22年度は、膵幹/前駆細胞候補細胞の膵β細胞への分化能を評価する目的で、in virtoでの分化誘導を試みた。細胞間接着の変化や様々な液性因子により、インスリン顆粒形成を示唆するジチゾン染色性を認めるようになった。また、インスリン生成の指標となるc-peptideの抗体に対する染色性も示した。さらに、in vitroで膵β細胞へと分化誘導した細胞をストレプトゾシン(STZ)誘発性糖尿病モデルマウスの腎被膜下に移植したところ、一過性ではあるが、血糖値の改善を認めた。これらの結果は、膵幹/前駆細胞候補細胞の膵β細胞への分化能を示唆するものである。この他、マウス成体膵における膵幹/前駆細胞候補細胞の有無について評価した。新生仔膵と同様の細胞表面抗原とフローサイトメーターを用いた解析から、マウス成体膵にも、数は少ないながら類似の細胞が存在することが確認された。免疫組織染色により、成体膵においても、膵幹/前駆細胞候補細胞は新生仔膵と類似した局在を示すことが明らかとなった。現在,in vitroあるいはin vivoで、より効率的に膵β細胞へ分化させる条件を検討中である。より良い分化誘導系の確立は、iPS細胞から分化させた膵β細胞による細胞移植治療や、薬剤等による内因性の膵β細胞分化誘導治療の前提となる、膵β細胞分化機構の解明に繋がることが期待される。
All 2010
All Presentation (3 results)