Project/Area Number |
21K00152
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
大久保 恭子 京都橘大学, 発達教育学部, 教授 (70293991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 裕美 (平田 裕美 / 松井裕美) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40774500)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 伝統 / 独立派 / アール・ヴィヴァン / マティス / キュビスム / シュルレアリスム / 現実 / フランス美術の伝統 / フランス性 / パリ万博 / 第二次世界大戦 / レアリスム / フランスの伝統 / パリ国際博覧会 / プリミティヴィズム / アルベール・グレーズ / アイデンティティ / 20世紀モダニズム |
Outline of Research at the Start |
本研究は、ドイツによる占領期を含む第二次世界大戦期フランスにおけるアイデンティティの危機に際して、芸術が果たした役割を「フランスの伝統」を糸口に解き明かそうとするものである。当時の言説を分析し、芸術家の活動実態を調査することで、戦時下での芸術評価を、言説上のみならず芸術的地政図に結びつけて考察する。これにより、第二次世界大戦期のフランスの芸術の本質を明らかにし、戦後の傾向として論じられてきたフランスからアメリカ合衆国への芸術の中心移動の諸相を、アメリカ中心の美術史とは異なる新しい視点から再検討するものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度(2023年度)は、第二次世界大戦期の「フランスの伝統」概念を検討するために1)1937年パリ国際博覧会時の「独立派芸術の巨匠たち1895-1937展」における展示されたものと排除されたものから見た「伝統」概念の検討結果の論文化 2)パリ解放後の「伝統」をめぐる言説とアメリカ合衆国における「フランスの伝統」の受容の比較検討をマティスを軸に行うことを課題とした。 1)については、『芸術と社会―近代における創造活動の諸相― (仮)』に収録予定の「フランス美術の「伝統」―包括と排除のレトリック―」において論文化し、2024年出版予定となった。「フランス性」を具体的作品に結びつけた「伝統」概念に着目し、わけても多様な「アール・ヴィヴァン」を展示した「巨匠展」において、排除されたものに焦点を当て、「伝統」に結びつく特質を浮き彫りにした。両大戦間期を通してフランスは、包括と排除という相反するスタンスをコインの裏表のように用いながら「伝統」概念を更新し続けた。その最末期、万博における「巨匠展」をめぐって、包括された面を排除された面から透かして見ることで、「伝統」概念形成の論理的戦略の一端を明らかにした。 2)については、「パリのマティスとニューヨークのマティス―芸術の中心移動期を中心に―」として日仏美術学会シンポジウム「21世紀にマティスを再考する:ポリフォニックな視点から」(京都工芸繊維大学、2023年9月23日)において口頭発表を行った。 研究分担者(松井裕美)は、フランス美術史の形成におけるキュビスムの位置付けを検討し、それがいかに伝統概念と関わるものであったのかを複数の運動との関係の中で明らかにした。またそうした歴史的伝統と「現実」という概念との関係性について認知科学の知見も踏まえ再解釈を行う研究を推進し、英語論文として雑誌『プシコロギア』に投稿し掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度(2023年度)は単年の進捗状況としての遅れはなく、むしろそれまでの遅れを改善する方向で研究は進行した。とはいえコロナ禍により生じた令和3年度(2021年度)の遅れを調整しきったとはいえず、また研究の進行に伴って新たに発生した課題を同時に進行させたために若干の遅れが生じた。そこで本研究課題の調査計画期間を一年延長することを申請し認められた。 令和5年度はこれまでに収集した資料の分析結果を踏まえ結果を論文化し、また口頭発表を行って公表した。これらは有意であった。さらに申請時には含まれていなかった視点からの、大戦間期における様々な「フランスの伝統」の錯綜の検討は、若干の遅れの理由となっているが、本課題に発展的な意味を持たせることにもなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度(2023年度)は前年度からの課題、1)これまでに収集した資料の分析を通して、パリ解放後の「伝統」をめぐる言説とアメリカ合衆国における「フランスの伝統」の受容の比較検討を行い、共著として出版 2)新たに収集した資料を分析し、両大戦間期におけるフランスの伝統表象をマティスの芸術活動を中心に、「プリミティフ」と言われた他者との関わり、植民地表象さらにシュルレアリスムとの関連から検討 3)資料を収集し、両大戦間期における「モダニズムの伝統」を、マティスによる「印象派」への再接近を糸口として検討 4)資料を収集し「伝統」とキリスト教徒の関わりをマティスの活動を軸に分析する。 上記の1)についてはすでに出版社との話し合いを開始し、本年度中の出版を目指して進めている。2)3)4)については前年度までに収集した資料に加え、今年度新たにGallicaをはじめオンラインのアーカイヴを調査し資料を収集を進める。またパリ市立近代美術館のアーカイヴを中心にパリでの調査を実行する。 研究分担者(松井裕美)は、キュビスム絵画と伝統概念との関係をめぐり、とりわけ「劇場性」と「ユートピア」という観点から再検討し、伝統的な科学的知識である解剖学がマティスやマッソンといった芸術家のイメージに及ぼした影響について、作品分析をもとに考察する方針であり、フランス国内のアーカイブ及び美術館での調査を行う予定である。 研究分担者とは定期的な意見交換を行い研究成果の報告を行う。
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