明治・大正期文学における進化論・退化論パラダイム表象に関する総合的研究
Project/Area Number |
21K00314
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石原 千秋 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (00159758)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 進化論 / 退化論 / 明治・大正文学 / 夏目漱石 / 近代批判 / 資本主義 / 個人主義 |
Outline of Research at the Start |
マックス・ノルダウの退化論の観点から、夏目漱石文学を手掛かりに、近代文学と文化について再検討し、LGBTの人たちへの批判や子供が産めない・産まない女性を「生産性がない」と人格を貶めるような形で、現在でもその顔をのぞかせる退化論パラダイムの構造を明らかにする。人類はいま新型コロナウイルスの脅威にさらされているが、それは速度への恐れである。夏目漱石『行人』の長野一郎はまさに速度を恐れている。ヴィリリオは『速度と政治』(平凡社)の中で、近代においてイギリスが覇権を握ったのは世界の中で「より速いものとして現れたから」だと論じている。そこで、特に速度とその表象に焦点を当てて近代の質を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
進化論・退化論を論じる際に注意しなければならないのは、個人主義との関係である。個人主義はヨーロッパ近代の発明という括り方が大まかすぎるかもしれない。 スペイン人であるオルデガ・イ・ガセットは『大衆の反逆』で「イギリス民族は、常に未来を先取りし、ほとんどすべての領域にわたって一番乗りをしてきた民族なのだ」と言った後に、こう修正してみせる。イギリス民族のあり方は「未来のために生き続けながらも、過去の中にも生きることであり、真の現在に存在できるということなのである」と言う。ポール・ヴィリリオは戦争論の中で「西欧の人間が到底多いとは言えない人口にもかかわらず優越性をもち支配的であるように見えたのは、より速い者として現れた」からで、わけてもイギリスの優位性が確立したのは「「産業革命」ではなく「速度の革命」が、民主主義ではなく速度体制が、戦略ではなく速度術が存在した」からだというのだ(『速度と政治 地政学から時政学へ』)と言う。近代日本がイギリスから学んだのもこのことだった。 フランスの人口学者エマニュエル・トッドは、イギリスの絶対核家族のあり方はイギリスで特に強度の高い個人主義と深い関わりがあるという。絶対核家族は長男単独相続なので、長男以外の子供が成人したら家族から出て行かなければならない。彼らはそれまでの土地を離れて新しい世代の労働力となる。そこで個人主義というより、もはや「個人化」と言っていいあり方が生まれる。それは社会からの孤立を意味せず、むしろフーコーが説くような社会の内面化が過剰に起きるというのだ(『我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか』)。 漱石は長男単独相続が円滑に運ばず、家族が解体の危機に瀕する物語を書き続けた。漱石の言う個人主義は、イギリス流の個人化と似てはいないだろうか。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている理由は、選挙で4月から7月まで早稲田大学で総長選挙管理委員会副委員長に選ばれ、この期間のほとんどの時間を奪われたからである。まことに腹立たしく思っている。 当初の計画では、今年度は収集した資料を読み込む期間であったが、研究の範囲を縮小して個人主義一般ではなく、漱石が深く影響を受けたイギリスの個人主義の特徴を明らかすることに集中した。このことで、昨年度迂回作戦として設けた資本主義と文学との関係に補助線を引くことができた。次は資本主義と進化論・退化論との関係の解明に進めるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
明治大正期において個人主義は最新の思想であり、同時に危険思想でもあった。つまり、もとも進化した思想だった。漱石が個人主義を語るときにある屈折を帯びているのは、時代による危険思想とならないためであったろうが、日本の道徳教育にも取り入れられたイギリスの哲学者・倫理学者グリーンの自我実現説には倫理観がともなっていた。それが個人主義批判に見えた面を見逃しがちだったので、つまり退化論の領域に見えがちだったので、ほかならぬイギイリスの個人主義理解をさらに深めることで、進化論と退化論を単純な二項対立としないで理解する方法を採る。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)