高精細X線CTスキャナ活用を中心とする古代中国の封泥の作成方法に関する総合的研究
Project/Area Number |
21K00980
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03050:Archaeology-related
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
谷 豊信 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 客員研究員 (70171824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮田 将寛 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 専門職 (90737503)
犬塚 将英 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 室長 (00392548)
市元 塁 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 室長 (40416558)
川村 佳男 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部企画課, 室長 (80419887)
上野 祥史 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (90332121)
高村 武幸 明治大学, 文学部, 専任教授 (90571547)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 封泥 / 高精細X線スキャナ / 蛍光X線分析 / X線回折分析 / 高精細X線CTスキャナ / 画像処理 / X線CTスキャナ / 成分分析 / 古代中国 |
Outline of Research at the Start |
古代中国の政治と行政で広く用いられた封泥(ふうでい。印を押した粘土の小塊)がどのようにして作成されたかを解明する。高精細X線CTスキャナにより、封泥内部に残る紐の痕跡の状態を知ることにより、封泥作成の手順を解明するとともに、非破壊的手法で成分分析を行い、封泥が二千年前後の時を経ても形を保ってきた謎に迫る。さらに封泥が装着されていた考古遺物を検討し、古代中国文化において封泥が果たした役割を考える。
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Outline of Annual Research Achievements |
古代中国では、文字は木や竹の札に書かれたが、文字を削り取って書き換えることが容易なため、重要な文書は紐で縛り、紐に粘土を盛り責任者の印を押して封印とした。この粘土が封泥であり、その作成手順を解明することは古代中国の統治の実態を研究に資するものである。 従来、封泥研究は肉眼観察に頼っていた。本研究では、封泥を高精細X線スキャナで撮影して三次元データを得、これを加工して封泥内部に残る紐痕を鮮明な画像で示すことにより、封泥の作成方法と使用方法の復元を試みる。また非破壊的手法で成分分析を行ない、封泥の成分についてデータを得る。さらに封泥が装着されていた考古遺物も検討し、古代中国において封泥が果たした役割を考える。あわせて関連する考古資料も検討し、古代中国文化において封泥が果たした役割を考察する。 令和3年度(初年度)に、封泥20個のX線CTデータを加工して検討したところ、紐痕の三次元的配置が明らかになったほか、用いられた紐の種類が多様であったこと、植物などの夾雑物の痕跡も残っているものがあり、植物の種実の痕跡には品種の同定が可能なものまであることなど、予想外の収穫を得た。また封泥28個の非破壊分析を実施し、封泥の成分は時代・地域を問わずよく似ているが、個体毎に微妙に異なることもわかった。 令和4年度は、25個の封泥のX線CTデータを画像処理し、紐痕の三次元的配置、紐の種類、夾雑物に関するデータを蓄積して分析を深めた。また蓄積されたCT画像で特異な状況が認められた4個の封泥について、問題の個所を狙った分析調査を実施した。 さらに封泥を装着した器物(木製品)の資料を集成する作業も進行中であり、封泥と封泥を装着した器物の双方から、封泥の使用方法を考える条件が整いつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
封泥の高精細X線CT画像から封泥の紐痕の三次元的配置を示す鮮明が画像が得られ、紐を埋め込んだ作業手順が解明できた。これは予想とおりの成果である。 さらに封泥に用いられた紐もかなり多様であることがわかり、紐の使用状況が歴史的に推移したことが想定されるに至っている。また封泥には精製された粘土が用いられたものと漠然と想像されていたのに反して、封泥内に植物の一部、とくに種実の類まで含まれていたことがわかっただけでなく、鮮明な画像から種実の品種もかなり同定できることができている。これらはまったく予想外の成果であり、これまでの研究では、そうしたことがわかる可能性すら想定されていなかったことである。 封泥の理学的成分分析研究は、中国で秦時代の数点の封泥について行なわれた例があるだけである。これまでに、古代中国の時代と作成地が異なる多くの封泥のデータが得られており、これだけ充実したデータは他で公表されたことがない。 また封泥を装着した古代中国の遺物の資料集成作業も進んでおり、封泥そのものと、封泥を装着した器物の双方から封泥の使用状況を検討する条件が整いつつある。これも従来になかった試みである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、本課題の最終年度にあたる。 本年度も封泥をX線CTスキャナで撮影し、15個について画像を鮮明にする加工を施す。令和3・4年度分と合わせた計60個分の画像により、中国の戦国秦漢時代の封泥作成方法の変遷の概要を明らかにできる見通しである。また新たに分担者に加わった植物考古学の専門家により、封泥内に残る種実などの植物の痕跡から有益な情報を読み取る。個々の封泥から得られた多数の画像を使用した詳細な報告を行なうこととする。 成分分析では昨年度まで成果を纏めるとともに、必要な追加の調査を実施する。 また封泥を装着した考古資料を集成し、封泥から得られた情報とつきあわせて、封泥の使用状況について検討を深める。また封泥に関するその他の考古資料についても検討を進める。 以上の成果は、その一部を今年度中に学術誌で公表し(投稿中)、すべての成果を盛り込んだ報告書を年度内に作成する。 なお当初は、東京国立博物館以外の機関が所蔵する封泥も分担者一同で肉眼観察して理解を広げることを計画していた。新型コロナの流行により共同調査を控えている間に、X線CT画像から予想を超える質と量の情報が得られることがわかり、その分析に集中するほうが短時間の肉眼観察を行なうよりはるかに有効と考えれるようになった。そのため全員による出張調査は行なわず、予定した予算は各人の研究計画に基づいて執行することとしたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)