台湾に移住したインドネシア華僑の自己表象実践の動態:社会統合政策の変遷の中で
Project/Area Number |
22KJ1997
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Project/Area Number (Other) |
22J23122 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柴山 元 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | インドネシア移民 / 帰国華僑 / 『印尼僑声』 / インドネシア商店 / 台湾 / インドネシア / ディアスポラ / インドネシア系移民 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、戦後早期にインドネシアの対華僑政策の影響を受けて台湾に「帰国」したインドネシア帰国華僑(帰僑)が実践する自己表象の歴史的動態を、戦後台湾の社会統合政策の変遷に照らし合わせて明らかにするものである。 帰僑は「中国人」を自認しており、そのために台湾に「帰国」した。一方で、1970年代以降婚姻移民と労働移民がインドネシアから台湾に流入しており、彼らと接触するなかで、帰僑がインドネシア出身者としての自己を表象する機会が増えた。 本研究では、この帰僑の自己表象の変遷を明らかにするために、公文書や雑誌などを用いた文献調査と台湾各地での聞き取り調査、参与観察を実施し、帰僑のライフヒストリーを記述する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年1月から台湾での長期調査を開始し、今年度もこれを引き続き遂行した。 昨年度に引き続き、インドネシア帰僑協会が発行する雑誌『印尼僑声』のバックナンバーから、1960年代前半に台湾に渡った帰僑たちの経済状況や当時の中華民国政府の政策に関連する記事および同誌に掲載された広告を収集し、これを整理した。この作業を通じて、1960年代初頭の台北にはインドネシアの食品や雑貨を売る帰僑の雑貨商がすでに存在したことが明らかとなった。 資料調査と並行して、1960年代に台湾へと移動した帰僑を対象として、彼らが当時送っていた生活について聞き取りを行い、雑誌資料や公文書には記載されていないライフヒストリーを収集した。この過程で、上述のインドネシア雑貨商は自転車に乗って行商し、特に台湾師範大学に留学していた華僑学生向けに商売をしていたことが明らかとなった。一方で、こうした行商はいつしか姿を消し(詳細な年代は未だ不明)、1990年代に移民労働者が流入してからインドネシアの食品や雑貨を売る行商や商店が再び出現したことが聞き取りから明らかとなった。 そこで、1990年代から2000年代にかけて台湾に渡りインドネシア商店を開いた人々を対象とした聞き取り調査を実施した。ここから明らかになったのは、(1)2000年前後に台湾に渡り留まった人の多くはインドネシア商店や移民労働者を斡旋する企業など、インドネシアに関連する仕事を有していること、(2)彼らは多くの場合1960年代以降に台湾に渡った親戚を持っていることである。また、(3)彼らのうち多くは1998年5月にジャカルタで発生した華人排斥事件をきっかけに台湾に渡った、もしくは以前から台湾に居留していて、同事件をきっかけに台湾に留まることを決めたということも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、フィールドワークを基にした資料調査と聞き取り調査を主たる研究方法とした地域研究である。そのため、現地調査の停滞は研究そのものの停滞を意味する。 本研究の実施にあたっては、前年度の段階で新型コロナウイルスの感染状況が落ち着かなかったために、現地でのフィールドワークの開始を大幅に遅らせるという事態が発生した。このため、フィールドワークの開始が遅延した分、研究の進行も大幅に遅延することとなった。 一方で、現地での長期調査を開始して以降は、比較的スムーズに調査を進めることができている。特に聞き取り調査と参与観察については、雪だるま方式で新たな調査協力者を得ることができているために、目下順調に進めることができている。また、資料収集に関しても、資料が所蔵されている場所に順調にアクセスできたことや、新たな資料の存在がわかったことで、大きな問題なく調査を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
台湾での長期調査は2024年度の10月まで継続する予定である。2024年度には、引き続きインドネシア帰僑および2000年前後に台湾へ渡ったインドネシア移民への聞き取り調査を実施する。 すでに先行研究が指摘しているように、2000年代に多くのインドネシア商店が出現した直接的な要因としては、台湾におけるインドネシア移民労働者の人口増加が挙げられる。ここでさらに、経営者の移動の背景に目を向けると、そこには1960年代にインドネシアから台湾へ移動した彼らの親戚の存在や1998年の華人排斥事件の影響といった要素が浮かび上がる。そこで2024年度には、インドネシア商店を経営している、2000年前後に台湾に渡ったインドネシア華僑を対象に聞き取り調査を実施し、この時期の台湾でインドネシア商店が増加した経緯を明らかにする。特に、台湾各地でインドネシア商店の出店を支えた人的・物的ネットワークの詳細を明らかにする。 また、資料調査にも新たな対象を加える。2024年度には台湾の国史館に所蔵されている、1960年代に台湾に移動したインドネシア帰僑に関する行政文書を収集し、来台後にインドネシアの商品を売っていた雑貨商に関する情報(出身地や出生年、家族構成など)を整理・分析する。必要に応じて、当時の顧客にも聞き取り調査も行う。 以上の作業を通じて、インドネシア商店を切り口とした、在台インドネシア移民社会史を描くことを目指す。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)