共生細菌による宿主性スペクトラムの撹乱

• 研究領域: 性スペクトラム - 連続する表現型としての雌雄
• 研究課題/領域番号: 17H06431
• 研究種目: 新学術領域研究(研究領域提案型)
• 配分区分: 補助金
• 審査区分: 生物系
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 勝間 進 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (20378863)
• 研究分担者: 木内 隆史 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60622892)
• 研究期間 (年度): 2017-06-30 – 2022-03-31
• 研究課題ステータス: 完了 (2021年度)
• 配分額: 111,020千円 (直接経費: 85,400千円、間接経費: 25,620千円); 2021年度: 22,880千円 (直接経費: 17,600千円、間接経費: 5,280千円); 2020年度: 22,880千円 (直接経費: 17,600千円、間接経費: 5,280千円); 2019年度: 22,880千円 (直接経費: 17,600千円、間接経費: 5,280千円); 2018年度: 22,880千円 (直接経費: 17,600千円、間接経費: 5,280千円); 2017年度: 19,500千円 (直接経費: 15,000千円、間接経費: 4,500千円)
• キーワード: ボルバキア / 性決定 / 性操作 / 昆虫 / オス殺し / 共生細菌 / チョウ目昆虫 / プロテアソーム / 遺伝子量補償 / オス化 / Masc / アワノメイガ / dsx / 性スペクトラム / カイコ / Masculinizer / doublesex / 性分化

研究成果の概要

本研究では、共生細菌ボルバキアがチョウ目昆虫においてオス特異的致死（オス殺し）を誘導するメカニズムの解明をおこなった。ボルバキア感染培養細胞を用いた生化学的な解析を行い、オス化因子Mascに結合する新規ボルバキアタンパク質Oscar（オス狩る）を同定することに成功した。Oscarはチョウ目昆虫由来のMascに結合し、Mascをプロテアソーム経路を介した分解に誘導した。さらに、Oscar cRNAを用いたインジェクション実験の結果、Oscarの発現のみで完全なオス殺しを再現することができた。これらの結果から、Oscarが追い求めたボルバキアのオス殺し因子であることが判明した。

研究成果の学術的意義や社会的意義

ボルバキアが持つオス殺し因子候補としては、ショウジョウバエに感染するボルバキアが持つwmkが報告されているが、真のオス殺し因子かどうか確証は得られていない。本研究において発見したOscarはチョウ目昆虫において完全なオス殺しを1遺伝子で再現できたことから、世界で初めてボルバキアオス殺し因子を発見した報告となった。今後、本遺伝子を用いたチョウ目昆虫の性操作技術の開発が期待できる。

研究成果

• [雑誌論文] Functional Characterization of Silkworm PIWI Proteins by Embryonic RNAi (2022)
  • 著者名/発表者名: Kiuchi T, Katsuma S
  • 雑誌名: Methods Mol Biol 巻: 2360 ページ: 19-31
• [雑誌論文] RNase κ promotes robust piRNA production by generating 2',3'-cyclic phosphate-containing precursors. (2021)
  • 著者名/発表者名: Shigematsu M, Kawamura T, Morichika K, Izumi N, Kiuchi T, Honda S, Pliatsika V, Matsubara R, Rigoutsos I, Katsuma S, Tomari Y, Kirino Y.
  • 雑誌名: Nat Commun. 巻: 12 号: 1 ページ: 4498-4498
  • DOI: 10.1038/s41467-021-24681-w
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] CRISPR/Cas9-mediated mutagenesis of Ago2 and Siwi in silkworm cultured cells (2021)
  • 著者名/発表者名: Katsuma S, Shoji K, Suzuki Y, Kiuchi T
  • 雑誌名: Gene 巻: 768 ページ: 145314-145314
  • DOI: 10.1016/j.gene.2020.145314
  • 査読あり
• [雑誌論文] Potential for small RNA production against Bombyx mori latent virus in Bombyx mori ovaries (2021)
  • 著者名/発表者名: Katsuma S, Shoji K, Suzuki Y, Iwanaga M
  • 雑誌名: Arch Insect Biochem Physiol 巻: 106 号: 2
  • DOI: 10.1002/arch.21761
  • 査読あり
• [雑誌論文] Characterization of nuclear localization signal in Ostrinia furnacalis Masculinizer protein (2021)
  • 著者名/発表者名: Hirota K, Matsuda-Imai N, Kiuchi T, Katsuma S
  • 雑誌名: Arch Insect Biochem Physiol 巻: 106 号: 3
  • DOI: 10.1002/arch.21768
  • 査読あり
• [雑誌論文] The genome sequence of Samia ricini, a new model species of lepidopteran insect (2020)
  • 著者名/発表者名: Lee Jung、Nishiyama Tomoaki、Shigenobu Shuji、Yamaguchi Katsushi、Suzuki Yutaka、Shimada Toru、Katsuma Susumu、Kiuchi Takashi
  • 雑誌名: Molecular Ecology Resources 巻: 21 号: 1 ページ: 327-339
  • DOI: 10.1111/1755-0998.13259
  • 査読あり
• [雑誌論文] Zucchini consensus motifs determine the mechanism of pre-piRNA production (2020)
  • 著者名/発表者名: Izumi Natsuko、Shoji Keisuke、Suzuki Yutaka、Katsuma Susumu、Tomari Yukihide
  • 雑誌名: Nature 巻: 578 号: 7794 ページ: 311-316
  • DOI: 10.1038/s41586-020-1966-9
  • 査読あり
• [雑誌論文] Masc-induced dosage compensation in silkworm cultured cells (2019)
  • 著者名/発表者名: Katsuma S, Shoji K, Sugano Y, Suzuki Y, Kiuchi T
  • 雑誌名: FEBS Open Bio 巻: 9 号: 9 ページ: 1573-1579
  • DOI: 10.1002/2211-5463.12698
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Two CCCH-type zinc finger domains in the Masc protein are dispensable for masculinization and dosage compensation in Bombyx mori (2019)
  • 著者名/発表者名: Kiuchi T, Sugano Y, Shimada T, Katsuma S
  • 雑誌名: Insect Biochem Mol Biol 巻: 104 ページ: 30-38
  • DOI: 10.1016/j.ibmb.2018.12.003
  • 査読あり
• [雑誌論文] 日本の研究者たちが主導したカイコの性決定研究 (2019)
  • 著者名/発表者名: 勝間進
  • 雑誌名: PJAニュースレター 巻: 11 ページ: 7-8
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] Unique sex determination system in the silkworm, <i>Bombyx mori</i>: current status and beyond (2018)
  • 著者名/発表者名: Katsuma S, Kiuchi T, Kawamoto M, Fujimoto T, Sahara K
  • 雑誌名: Ｐｒｏｃｅｅｄｉｎｇｓ ｏｆ ｔｈｅ Ｊａｐａｎ Ａｃａｄｅｍｙ． Ｓｅｒ． Ｂ： Ｐｈｙｓｉｃａｌ ａｎｄ Ｂｉｏｌｏｇｉｃａｌ Ｓｃｉｅｎｃｅｓ 巻: 94 号: 5 ページ: 205-216
  • DOI: 10.2183/pjab.94.014
  • NAID: 130006733759
  • ISSN: 0386-2208, 1349-2896
  • 年月日: 2018-05-11
  • 査読あり
• [雑誌論文] In vivo masculinizing function of the Ostrinia furnacalis Masculinizer gene (2018)
  • 著者名/発表者名: Fukui T, Kiuchi T, Shoji K, Kawamoto M, Shimada T, Katsuma S
  • 雑誌名: Biochem Biophys Res Commun 巻: 503 号: 3 ページ: 1768-1772
  • DOI: 10.1016/j.bbrc.2018.07.111
  • 査読あり
• [雑誌論文] Accumulation of uric acid in the epidermis forms the white integument of Samia ricini larvae (2018)
  • 著者名/発表者名: Lee J, Kiuchi T, Kawamoto M, Shimada T, Katsuma S
  • 雑誌名: PLoS One 巻: 13 号: 10 ページ: e0205758-e0205758
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0205758
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] アワノメイガ類における共生細菌ボルバキアによる雄殺しの分子メカニズム (2018)
  • 著者名/発表者名: 木内隆史・勝間進
  • 雑誌名: 蚕糸・昆虫バイオテック 巻: 87 号: 3 ページ: 3_159-3_164
  • DOI: 10.11416/konchubiotec.87.3_159
  • NAID: 130007791176
  • ISSN: 1881-0551, 1884-7943
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] カイコ性決定遺伝子の同定とチョウ目昆虫における性操作技術の開発 (2018)
  • 著者名/発表者名: 勝間進
  • 雑誌名: JATAFFジャーナル 巻: 6
• [雑誌論文] 共生細菌ボルバキアによる「オス殺し」 (2017)
  • 著者名/発表者名: 木内隆史
  • 雑誌名: アグリバイオ 巻: 14 ページ: 17-21
• [学会発表] Oscarはチョウ目昆虫に共通して機能するオス殺し因子か (2022)
  • 著者名/発表者名: 勝間進、松田(今井)典子、廣田加奈子、木内隆史
  • 学会等名: 令和4年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会（日本蚕糸学会第92回大会）
• [学会発表] アワノメイガMascのプロテアソームを介した分解はボルバキア因子によって誘導される (2022)
  • 著者名/発表者名: 松田(今井)典子、廣田加奈子、小迫英尊、福井崇弘、室智大、高梨秀樹、有村慎一、木内隆史、勝間進
  • 学会等名: 令和4年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会（日本蚕糸学会第92回大会）
• [学会発表] アワノメイガにおいてオス殺し現象を引き起こすボルバキア因子の同定 (2022)
  • 著者名/発表者名: 廣田加奈子、松田(今井)典子、小迫英尊、福井崇弘、室智大、高梨秀樹、有村慎一、木内隆史、勝間進
  • 学会等名: 令和4年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会（日本蚕糸学会第92回大会）
• [学会発表] アワノメイガにおける初期胚インジェクション実験系の確立 (2022)
  • 著者名/発表者名: 福井崇弘、木内隆史、勝間進
  • 学会等名: 令和4年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会（日本蚕糸学会第92回大会）
• [学会発表] アワノメイガ類におけるボルバキア感染の進化史の解明 (2022)
  • 著者名/発表者名: 室智大、疋田弘之、藤井毅、木内隆史、勝間進
  • 学会等名: 令和4年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会（日本蚕糸学会第92回大会）
• [学会発表] オス殺しWolbachia感染アワノメイガから生じたオスに関する報告 (2021)
  • 著者名/発表者名: 福井崇弘、室智大、廣田加奈子、富原健太、藤井毅、勝間進
  • 学会等名: 第78回昆虫病理研究会
• [学会発表] アワノメイガ類の近縁2種に感染するオス殺しボルバキアのゲノム解析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 室智大、疋田弘之、藤井毅、木内隆史、勝間進
  • 学会等名: 第78回昆虫病理研究会
• [学会発表] チョウ目昆虫におけるMasc依存的性決定システムの比較 (2021)
  • 著者名/発表者名: 勝間進、松田(今井)典子、廣田加奈子、福井崇弘、庄司佳祐、木内隆史
  • 学会等名: 令和3年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会（日本蚕糸学会第91回大会）
• [学会発表] ボルバキアによるアワノメイガMascの発現抑制 (2021)
  • 著者名/発表者名: 松田(今井)典子、廣田加奈子、木内隆史、勝間進
  • 学会等名: 令和3年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会（日本蚕糸学会第91回大会）
• [学会発表] アワノメイガMasc-ボルバキア間の相互作用機構の解析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 廣田加奈子、松田(今井)典子、木内隆史、勝間進
  • 学会等名: 令和3年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会（日本蚕糸学会第91回大会）
• [学会発表] アワノメイガ類に感染するオス殺しボルバキアの比較解析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 室智大、疋田弘之、藤井毅、木内隆史、勝間進1
  • 学会等名: 令和3年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会（日本蚕糸学会第91回大会）
• [学会発表] アワノメイガ共生Wolbachiaが持つオス殺し因子のスクリーニング (2020)
  • 著者名/発表者名: 室智大、松田(今井)典子、疋田弘之、木内隆史、勝間進
  • 学会等名: 令和2年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会（日本蚕糸学会第90回大会）
• [学会発表] Wolbachiaによる宿主性決定因子のコントロール (2020)
  • 著者名/発表者名: 松田(今井)典子、廣田加奈子、木内隆史、勝間進
  • 学会等名: 令和2年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会（日本蚕糸学会第90回大会）
• [学会発表] アワノメイガとカイコのMasc依存的性決定システムの比較 (2020)
  • 著者名/発表者名: 勝間進、松田(今井)典子、庄司佳祐、廣田加奈子、木内隆史
  • 学会等名: 令和2年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会（日本蚕糸学会第90回大会）
• [学会発表] The Fem piRNA-Masc system determines the sex in Bombyx mori (2019)
  • 著者名/発表者名: Katsuma S
  • 学会等名: International symposium involving Chinese and Japanese insect virologists
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Sex determination in Samia ricini (2019)
  • 著者名/発表者名: J. Lee, T. Shimada, T. Kiuchi, S. Katsuma
  • 学会等名: 日本比較生理生化学会第41回東京大会
  • 招待講演
• [学会発表] The molecular mechanism of Wolbachia-mediated male-killing in Ostrinia moths (2019)
  • 著者名/発表者名: T. Kiuchi, S. Katsuma
  • 学会等名: 日本比較生理生化学会第41回東京大会
  • 招待講演
• [学会発表] Mascによる遺伝子量補正はどちらのZ染色体にはたらくか？ (2019)
  • 著者名/発表者名: 木内隆史・川本宗孝・鈴木穣・嶋田透・勝間進
  • 学会等名: 平成31年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会
• [学会発表] エリサンの性決定機構の解明 (2019)
  • 著者名/発表者名: 李允求・木内隆史・嶋田透・勝間進
  • 学会等名: 平成31年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会
• [学会発表] カイコのオス化と遺伝子量補償を担うMascの作用機序 (2019)
  • 著者名/発表者名: 木内隆史
  • 学会等名: 性スペクトラムー連続する表現型としての雌雄 第1回 若手研究会
• [学会発表] ボルバキアがアワノメイガのオス殺しを実行する仕組み (2018)
  • 著者名/発表者名: 勝間進・川本宗孝・庄司佳祐・木内隆史
  • 学会等名: 第13回昆虫病理研究会シンポジウムプログラム
• [学会発表] ボルバキアがオス殺しを実行する仕組み (2018)
  • 著者名/発表者名: 勝間進
  • 学会等名: 性スペクトラムー連続する表現型としての雌雄 第2回領域会議
• [学会発表] Wolbachia感染アワノメイガ初期胚のRNA-seq解析による「オス殺し」因子の探索 (2018)
  • 著者名/発表者名: 川本宗孝、福井崇弘、濱中陽子、木内隆史、菅野純夫、嶋田透、鈴木穣、勝間進
  • 学会等名: 平成30年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会
• [学会発表] 愛知県産アズキノメイガにおける遺伝的要因による性比異常現象 (2018)
  • 著者名/発表者名: 濱中陽子、嶋田透、勝間進
  • 学会等名: 第62回日本応用動物昆虫学会大会
• [学会発表] カイコの性はpiRNAを介した性染色体間の相互作用によって決まる (2017)
  • 著者名/発表者名: 勝間進，木内隆史，川本宗孝，庄司佳祐
  • 学会等名: ConBio2017
  • 招待講演
• [学会発表] オス殺し細菌の除去によるアワノメイガのメス特異的致死現象に関する研究 (2017)
  • 著者名/発表者名: 福井崇弘、木内隆史、嶋田透、勝間進
  • 学会等名: 第76回昆虫病理研究会
• [学会発表] 細胞内共生細菌Wolbachiaがもつ「オス殺し因子」の探索 (2017)
  • 著者名/発表者名: 濱中陽子、福井崇弘、川本宗孝、庄司佳祐、木内隆史、菅野純夫、嶋田透、鈴木穣、勝間進
  • 学会等名: 第76回昆虫病理研究会
• [図書] コラム：性決定のしくみ（カイコの実験単～カイコで生命科学をまるごと理解～） (2019)
  • 著者名/発表者名: 木内隆史・勝間進
  • 総ページ数: 2
  • 出版者: エヌ・ティー・エス
  • ISBN: 9784860435981
• [図書] 次世代シークエンサーとゲノム研究（カイコの実験単～カイコで生命科学をまるごと理解～） (2019)
  • 著者名/発表者名: 川本宗孝・勝間進
  • 総ページ数: 3
  • 出版者: エヌ・ティー・エス
  • ISBN: 9784860435981
• [図書] 昆虫の性－多様な性決定遺伝子とそれらをのっとる寄生者（遺伝子から解き明かす性の不思議な世界） (2019)
  • 著者名/発表者名: 勝間進
  • 総ページ数: 44
  • 出版者: 一色出版
  • ISBN: 9784909383068
• [備考] 東京大学昆虫遺伝研究室ホームページ
  • URL: https://sites.google.com/view/igblab-ut-aba
• [備考] 東京大学昆虫遺伝研究室ホームページ
  • URL: https://sites.google.com/view/igblab-ut-aba/top
• [備考] 東京大学昆虫遺伝研究室ホームページ
  • URL: http://papilio.ab.a.u-tokyo.ac.jp/igb/