研究領域 | 量子クラスターで読み解く物質の階層構造 |
研究課題/領域番号 |
18H05403
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田村 裕和 東北大学, 理学研究科, 教授 (10192642)
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研究分担者 |
永江 知文 京都大学, 理学研究科, 教授 (50198298)
高橋 俊行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50281960)
三輪 浩司 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50443982)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
161,200千円 (直接経費: 124,000千円、間接経費: 37,200千円)
2022年度: 39,520千円 (直接経費: 30,400千円、間接経費: 9,120千円)
2021年度: 31,850千円 (直接経費: 24,500千円、間接経費: 7,350千円)
2020年度: 31,330千円 (直接経費: 24,100千円、間接経費: 7,230千円)
2019年度: 27,560千円 (直接経費: 21,200千円、間接経費: 6,360千円)
2018年度: 30,940千円 (直接経費: 23,800千円、間接経費: 7,140千円)
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キーワード | クラスター / ストレンジネス / ハイパー核 / K中間子原子核 / Hダイバリオン / ハイペロン核子散乱 / グザイ原子X線 / グザイハイパー核 / ハイペロン核子相互作用 / Hダイバリオン |
研究実績の概要 |
J-PARCハドロン施設において以下の研究を進めた。 (1a) Σ陽子散乱実験(E40)では、Σ-p/Σ+p散乱データの解析を進め、Σ-p弾性散乱、Σ-p→Λn非弾性散乱、およびΣ+p弾性散乱の微分断面積を初めて高精度で導出し、それぞれ論文として公表し、Σ-p散乱についてプレスリリースを行った。さらにΛ陽子散乱実験の提案をJ-PARCに行い、stage-1採択された。 (1b) Hダイバリオン探索実験(E42)を実施した。ハイペロンスペクトロメータをK1.8ラインに設置し、KURAMAスペクトロメータ系を含む全測定器を立ち上げ、ほぼ予定通りの統計量のデータを収集した。 (1c-1) Ξハイパー核分光実験(E70)では、アクティブ標的のシンチレーションフィバーの読出し回路や他の検出器の準備を進めた。E42の実施後、E70実験用のS-2Sスぺクトロメータ磁石をK1.8エリアに設置した。1c-2) 以前実施したエマルジョンを用いたダブルハイパー核探索実験(E07)のエマルジョン解析を進めた。Ξ粒子が極めて深く束縛した新たなΞハイパー核事象を発見し論文発表した。また機械学習によるダブルハイパー核事象の探索手法の開発を進めた。(1c-3) Fe原子核を標的としたΞ原子X線分光実験(E03)のデータ収集を終了しデータ解析を進めた。 (2a) Hダイバリオン探索実験(E42)において、ハイペロンスペクトロメータを利用して炭素標的核での(K-,p)反応によるK中間子核の生成・崩壊データを同時に収集した。 (2b) 核内Λの磁気モーメントと弱崩壊を少数系Λハイパー核で調べる実験(E63)のため、開発したハイパー核崩壊粒子用のレンジカウンターをK1.8ラインの後方に設置し、低エネルギーπ中間子を検出器中に静止させるテスト実験を実施、データ解析の結果この検出器が十分な性能を持っていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Σ陽子散乱実験(E40)は、予定通り解析を完了し論文発表とプレスリリースができた。Ξ原子X線分光実験(E03)は、年度末に発生した加速器トラブルのため予定に反して2021年度4月までビームタイムが伸びたものの、予定通りの統計量のデータを取得して終了できたことは良かった。その後、同じK1.8ラインで次の実験、Hダイバリオン探索(E42)へのセットアップ変更を急いで行い、夏までに所定のビームタイムをこなすことができた。予定より短い過密スケジュールだったが無事実験を夏前に実施できたことは高く評価できる。E03,E42ともにデータ解析を順調に進めた。6月末までE42実験を行った後、次に行うΞハイパー核分光実験(E70)の準備を順調に進めることができた。 ダブルハイパー核探索実験(E07)のエマルジョン画像解析では、予想を覆す極めて深くΞが束縛したΞハイパー核事象を発見したが、これはΞN→ΛΛ転換が極めて小さく抑えられていることを示す貴重なデータとなり、高く評価できる。 E63実験についてはビームラインの建設が遅れているため、科研費の期間中には本実験は実施できないが、新しいハイパー核種同定用飛程検出器の開発が進み、パイ中間子ビームを使ったテスト実験も実施し、性能が確認できた。この検出器に組み合わせる位置検出器はデザイン変更が必要となり予定より遅れたが、繰越し後の2022年度に完成した。
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今後の研究の推進方策 |
(1a) Σ陽子散乱実験(E40)では、実験結果を再度プレス発表し国際会議等で積極的に発信するとともに、将来のΛ陽子散乱実験について準備を進める。 (1b) Hダイバリオン探索実験(E42)では、データの解析を進展させる。 (1c-1)Ξハイパー核分光実験(E70)については、ビームタイムに向けてS-2Sスペクトロメータ系の構築などのセットアップの大幅変更を期限内に実施し、秋以降のビームタイムではS-2Sスペクトロメータの性能を確認する。 (1c-2) エマルジョン(原子核乾板)を用いたダブルハイパー核探索実験(E07)については、画像解析をさらに進めるとともに機械学習による解析手法を確立する。また、E07実験で同時に行った、エマルジョンを用いたΞ原子X線探索については、新しい実験手法を確立したので、その成果を論文で発表する。(1c-3) Ξ原子X線分光実験(E03)については、詳細なデータ解析を進めて、秋頃までに解析を完了する。 (2a)上記のHダイバリオン探索実験(E42)と同時に取得した炭素標的核での(K-,p)反応によるK中間子原子核の生成・崩壊のデータについて、解析を進め、先行実験で示唆されている深い束縛状態の有無をはっきりさせる。 (2b) 核内Λの磁気モーメントと弱崩壊を少数系Λハイパー核で調べる実験(E63)については、開発したハイパー核同定用崩壊粒子検出器の最終テストを行い、本実験の準備を完了する。E63実験は、実験を行うK1.1ビームラインの建設が科研費期間中には間に合わないが、実験準備を整えておき、K1.1ビームラインが整備され次第行うこととする。 今後も加速器トラブル等によるビームタイムの遅延が起こりうるが、遅延した期間には実験準備とデータ解析を徹底的に進め、ビームタイムを100%有効に使うとともに、取得したデータからできる限りの結果を導き出すよう心掛ける。
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