研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
19H05712
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
神吉 智丈 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50398088)
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研究分担者 |
松田 憲之 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (10332272)
佐藤 美由紀 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (70321768)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
119,340千円 (直接経費: 91,800千円、間接経費: 27,540千円)
2023年度: 23,400千円 (直接経費: 18,000千円、間接経費: 5,400千円)
2022年度: 23,400千円 (直接経費: 18,000千円、間接経費: 5,400千円)
2021年度: 23,400千円 (直接経費: 18,000千円、間接経費: 5,400千円)
2020年度: 23,400千円 (直接経費: 18,000千円、間接経費: 5,400千円)
2019年度: 25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
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キーワード | ミトコンドリア / オートファジー / マイトファジー / ユビキチン |
研究開始時の研究の概要 |
マクロオートファジーによる選択的ミトコンドリア分解はマイトファジーと呼ばれ、ミトコンドリア恒常性維持に関わる極めて重要な現象である。マイトファジーの分子機構は生物種ごとに特異性があるため、その分子機構や生理的意義には不明な点が多い。本研究では、複数の生物種(酵母、線虫、哺乳類)をモデル生物とし多面的な解析を行い、マイトファジーの統合的な理解を目指す。特に、マイトファジーを、「レセプター依存的マイトファジー」と「ユビキチン依存的マイトファジー」に大別して分子機構と生理的意義の解明を進める。
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研究実績の概要 |
本研究では、生物種ごとに多様性のあるマイトファジーの分子機構を、複数の生物種をモデルとして解析し、マイトファジーの統合的理解を目指している。 ○出芽酵母においてマイトファジーに必要な新規因子としてAtg44を同定した。atg44破壊株は、ミトコンドリア分裂因子dnm1破壊株と同様にミトコンドリアが膨潤する形態異常を認めたため、Atg44もミトコンドリア分裂因子であると考えられた。さらに、in vitro実験から、Atg44は脂質膜に結合し、膜を直接切断する役割を持つことが明らかになった。こうしたことから、Atg44はマイトファジー時に機能するミトコンドリア分裂因子であると結論付けた。 ○遺伝性パーキンソン病に関連するPINK1とParkinが損傷ミトコンドリアをマイトファジーで分解するメカニズムの探索を行った。このプロセスは精力的に研究が進められているが、Parkinと協調して働くユビキチン結合酵素(E2)の実体は諸説あって不明であった。分担研究者松田らは、タンパク質間の相互作用を細胞内の液滴形成としてモニター可能なFluoppi systemを用いて解析をおこない、マイトファジーにおけるParkinのパートナーE2がUBE2Ds, UBE2L3, UBE2E1, UBE2E3, UBE2Cであることを見出した(Hayashida, JBC 2023)。 ○線虫 C.elegans 受精卵における父性ミトコンドリア選択的オートファジーに働くアダプター・ALLO-1について機能解析を行い、アイソフォームaはユビキチンと直接結合することを示し、それに重要な残基を同定した。また、哺乳類細胞でアイソフォームaを異種発現させると、Parkin依存的マイトファジー誘導下でミトコンドリアに集積することから、マイトファジーの基本メカニズムは高度に保存されていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究では、酵母、哺乳類培養細胞、線虫の研究で十分な成果が出ており、研究は予想通りに進展していると考えられる。こうしたことから、研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
○これまでの研究で、出芽酵母におけるマイトファジーの分子機構の大部分が解明されたと思われる。残された課題として、マイトファジー制御に必須の、マイトファジーレセプターAtg32とFar複合体との結合制御機構の解明を目指す。 ○マウスを用いた実験では、マイトファジーの生理機構を明らかにするために、樹立したマイトファジー可視化マウスを用いて研究を進める。特に、骨格筋廃用性萎縮モデルを用いて、マイトファジー誘導の生理的意義を明らかする。さらに、その他の臓器でのマイトファジーの理解も発展させていく。 ○PINK1/Parkin依存性マイトファジーの際に、アダプタータンパク質のOPTNやNDP52がTBK1キナーゼによってリン酸化されるが、TBK1のキナーゼ機能が活性化されるメカニズムや、OPTNリン酸化の意義には未解明の点が残されている。また、申請者がマイトファジーの関連因子として新たに単離したBCAS3の変異は神経発達障害を伴う遺伝性疾患の原因となるが、疾患変異がBCAS3の機能に与える影響や、神経細胞におけるBCAS3の役割は現時点では不明である。今後はマイトファジーにおいてTBK1キナーゼがアダプターをリン酸化する意義や、マイトファジーに際してBCAS3が隔離膜上で担う分子機能を解明していきたい。 ○ALLO-1の局在化の制御機構や父性オルガネラのユビキチン化を制御する因子を明らかにするため、質量分析を用いたALLO-1結合因子の探索や、父性ミトコンドリアオートファジーが不全となる変異体のスクリーニングを行う。
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