研究領域 | 多様かつ堅牢な細胞形質を支える非ゲノム情報複製機構 |
研究課題/領域番号 |
19H05742
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村上 洋太 北海道大学, 理学研究院, 教授 (20260622)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
80,080千円 (直接経費: 61,600千円、間接経費: 18,480千円)
2023年度: 16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2022年度: 14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
2021年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
2020年度: 16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2019年度: 18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
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キーワード | エピジェネティクス / クロマチン / 分裂酵母 / ヘテロクロマチン / RNAi / 反復配列 / 分裂公募 / イレーザー / Epe1 / JmjCタンパク質 / ヒストン修飾Eraser / エピゲノム維持 / eraser / Eraser / エピゲノム複製 |
研究開始時の研究の概要 |
抑制的クロマチン構造複製・変動制御のマスターレギュレーターであるEpe1によるヘテロクロマチン複製・変動制御について以下の点を明らかにする。(1) Epe1によるRNAi活性化や異所的ヘテロクロマチン抑制の分子機構の解明、(2) 減数分裂特異的遺伝子上の一時的ヘテロクロマチンの複製維持機構、 (3) Eraserによるヘテロクロマチン複製・変動制御システムの哺乳類細胞での普遍性の検討。
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研究実績の概要 |
分裂酵母の恒常的ヘテロクロマチンはRNAi機構により確立・維持されている。JmjCドメインをもつEpe1は、異所的なH3K9meを除去する。我々はEpe1 がRNAi機構をヘテロクロマチンでG2期に活性化し、複製により減少したH3K9meを補填すること明らかにしてきた。また、 Epe1が恒常的ヘテロクロマチンに散在するプロモーターからの転写を活性化することを明らかにし「散在するプロモーター」とEpe1の組合せが効率良いRNAi依存ヘテロクロマチン形成のシグナルになる可能性を示した。さらに散在するプロモーターと類似した状況を作るために転写ユニットが多コピー反復した配列をユークロマチンに挿入し、その転写ユニットに対応するsiRNAを人為的に供給するとRNAi依存ヘテロクロマチン形成が誘起され、その後人為的siRNA供給なしに自律的なRNAi依存ヘテロクロマチン形成がおこることを示した。 今年度はEpe1欠損株ではsiRNA供給により単一コピーの転写ユニット上でも反復配列と同様に効率良くヘテロクロマチン形成がおこること、さらにsiRNAの供給によりEpe1欠損株で単一コピー、多コピーそれぞれの転写ユニットにヘテロクロマチンを形成させた後、siRNAの供給を停止すると同時にEpe1を導入すると単一コピー配列上のヘテロクロマチンは速やかにEpe1により除去されるが、多コピー配列上のものはは維持されることを示した。これはEpe1がヘテロクロマチン下のDNAの転写ユニットの反復状況に応じて、ヘテロクロマチン消去と維持を使い分けていることを示している。 多くの生物種で反復配列がヘテロクロマチン化されることが知られていたが、そのメカニズムは未知であった。我々の発見はこのメカニズムの一端を示したもので、ヘテロクロマチン形成の根本の理解に大きく貢献するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題ではヘテロクロマチンEraserであるEpe1がヘテロクロマチン形成で果たす役割を明確にすることが目的である。本年度反復する転写ユニットからの転写を誘起することで効率良いRNAi依存ヘテロクロマチン形成を誘起することを明確に示し、論文として発表することができた。 一方哺乳類でのEpe1ホモログ探索については、jmjCドメイン蛋白質23種について遺伝子破壊をおこない表現型解析をおこなったが、恒常的ヘテロクロマチンに影響をあたえるようなものを示すものは得られなかった。これは、ほ乳類細胞では複数のヘテロクロマチン形成、維持機構が存在することがげんいんなのかもしれない。 以上を総合的に判断して「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
また、本研究で使用した反復配列によるヘテロクロマチン誘起のシステムは、シンプルな転写ユニットに基づく系であるため、RNAiによるヘテロクロマチンの分子機構を解析する上で強力なツールになることが期待できる。現在、分裂酵母RNAi依存ヘテロクロマチン形成においてスプライシング因子が寄与する事が示されているが、その分子機構は良くわかっていない。我々のシステムは反復する転写ユニットにイントロンの有る無しを選択できるため、スプライシング因子の寄与について解析する良いツールとなるので、この解析を進める。 また、Epe1のリン酸化についてもようやく必要量のEpe1を細胞から回収する方法が確立できる目途がたったために、その解析を進める。
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