研究領域 | ヘテロ群知能:多様な細胞の集団動態から切り拓く群知能システムの革新的設計論 |
研究課題/領域番号 |
21H05106
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 同志社大学 (2022-2023) 名古屋市立大学 (2021) |
研究代表者 |
金子 奈穂子 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (20464571)
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研究期間 (年度) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
41,990千円 (直接経費: 32,300千円、間接経費: 9,690千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2021年度: 24,700千円 (直接経費: 19,000千円、間接経費: 5,700千円)
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キーワード | 脳室下帯 / ニューロン再生 / 細胞移動 / 脳梗塞 / 新生ニューロン / 鎖状細胞移動 / 群知能 / アストロサイト |
研究開始時の研究の概要 |
成体脳内の脳室下帯で産生された新生ニューロンは、細長い細胞塊を作り、交互に足場となりながら、周囲のグリア細胞に作らせたトンネルの内部を移動して、再生に寄与する。しかし、移動・足場形成・トンネル誘導という複数のタスクを交互に分担するヘテロな細胞群としての挙動のメカニズムは不明である。本研究では、この挙動を抽象度の高い数理モデルを用いて群としての移動制御機構を見出すとともに、その基盤となる分子機構を解析し、新生ニューロンが「群」として精緻な脳機能の修復に寄与する群知能的な移動制御メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
1、培養環境下で鎖状移動する新生ニューロンのライブイメージング 1)2022年度初に同志社大学で自身の研究室を開設したため、新たに購入・整備した機器を用いてこれまで行ってきた培養細胞・脳スライスを用いたタイムラプスイメージングと同様のデータを取得するための条件決定を行なった。 2)マウスの脳室下帯組織を切り出し、濃度・組成の異なるゲルに包埋培養した。鎖状細胞塊を形成する新生ニューロンを対象として、3次元的な挙動を追跡するタイムラプス撮像を行い、得られた画像を用いて、鎖状細胞塊を形成する新生ニューロンの移動軌跡をトラッキングした(A02 梅津博士との共同研究)。 3)培養条件下で鎖状移動する新生ニューロンのライブイメージングから、A01 加納博士らとディスカッションを行い、基盤となる数理モデルを作成した。これまでに得られた新生ニューロン-アストロサイトの相互作用をモデル内に含めて、細胞群を形成する意義やヘテロ性の意義を検討した。 2、移動・成熟中の新生ニューロンのSingle cell RNAseq:前年度に検討したFACSを用いたシングルセルサンプルから、Chromium社10x Genomixを用いてcDNAライブラリーを作製し、次世代シークエンサーで網羅的遺伝子発現解析を行なった。得られたデータを用いて、バイオインフォマティクス解析を解析した。 3、脳梗塞後の脳内を移動する新生ニューロンとアストロサイトの電子顕微鏡解析:脳梗塞モデルマウスの脳内を移動する新生ニューロンと周囲のアストロサイト、血管構造を、Serial Block Face Scanning Electron Microscopyを用いて解析を行った。血管周囲に存在するアストロサイトの微細突起全てを検出することを目標としており、解析を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、研究代表者の異動のため、研究室のセットアップが必要だった。撮像設備や培養装置を新たに整備したため、それらに伴う実験条件の最適化に時間を要した。しかし、年度内に、本研究で計画している研究を遂行する環境の整備を行うことができた。この間、細胞培養や動物実験などの実験系の遂行には遅れが生じたが、数理モデル構築のためのディスカッションや論文検索、シングルセルRNAシークエンシングのデータ整理等は当初の計画以上に進めることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、数理モデルの構築と新生ニューロンの培養実験による検証の繰り返しが本研究の発展に重要なステップであると考えている。そのため、研究室に所属する大学院生1名が本研究の培養実験を担当して、A02梅津博士のサポートのもとで移動軌跡のトラッキング実験、A01加納博士が進めている数理モデルのさらなる改良と、アストロサイトとの相互作用モデルの検証を行う。これらによって新生ニューロンの挙動のヘテロ性の移動における意義を明らかにするとともに、シングルセルレベルの網羅的遺伝子発現データをバイオインフォマティクス解析して、ヘテロ性を裏打ちする遺伝子発現の多様性を見出すことを目指す。
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