研究概要 |
本研究では異方性の競合するランダム磁性体及び交換相互作用の競合するランダム磁性体(スピングラス)における励起について実験的に詳しく調べることを目的とした。平成元年,二年度に行った研究及び得られた成果は以下の通りである。 1.研究に必要なMg_<1ーx>Co_xCl_2,Mg_<1ーx>Fe_xCl_2等の種々の濃度の良質な単結晶を作製した。 2.クライストロン電源等を購入し,現有の装置と組み合わせてミリ波領域の電子スピン共鳴(ESR)測定装置を完成させた。更にコンピュ-タ-を購入し,自動測定システムを組み立てた。 3.1の試料につき2の装置を用いてミリ波領域のESR実験を行い,またパリ大学へ出張してJ.Tuchendler教授と共同でサブミリ波領域のESR実験を行った。 4.ランダムに希釈されたXY型磁性体Mg_<1ーx>Co_xCl_2においてパ-コレ-ション濃度以下の磁気励起を調べた。有限サイズのクラスタ-による一様励起モ-ド及び異方的交換相互作用で結合したCoペア-によるモ-ドを見つけた。 5.ランダムに希釈されたイジング型磁性体Mg_<1ーx>Fe_xDl_2の磁気励起について調べ、異方性の原因として-イオン型と異方的交換相互作用が同程度寄与していることを明らかにした。 6.代表的な一次元ハイゼンベルグ反強磁性体Ni(C_2H_8N_2)_2NO_2(ClO_4)に少量のCuをランダムに導入した系の磁気励起を調べた。新しいESR線が見つかり、これは次のようなモデルでうまく説明されることが分かった。Valence Bond Solid状態にCuが入ると隣のNiの1/2スピンの一つづつが復活する。三つの弱く結合した1/2スピン系の励起スペクトルを計算したところ実験を定量的に説明することが出来た。
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