研究概要 |
ヒストンとDNAから形成されるクロマチンの最も高次の構造は30mファイバ-であるが,ゲノムDNAの特定領域は核内でさらに凝縮した超構造を形成している。クロマチンの超構造形成にはヒストンの他に非ヒストンタンパク質の関与やDNA配列の特徴,核構造との結合などが重要な因子となっているように思われる。本研究では性染色体の形成するヘテロクロマチンと転甲不活性時のファブロインH鎖遺伝子が形成する異常凝縮クロマチンを対象として超構造形成の機構を解析した。 1.ニワトリのWヘテロクロマチンボディ-の構造 W染色体(雌特有の性染色体)DNAの約60%はXhoエファミリ-反復配列で占せられていることを既に報告したが,本研究ではこの配列と約68%の相同性を示し,W染色体DNAの10〜30%を占めると考えられるEcoRIファミリ-反復配列を見出し,その1.2kb反復単位のクロ-ニングと塩基配列決定を行った。1.2kb反復単位はXhoIC.7kb反復単位と同様に約21bpの基本単位が縦列重復した構造を有し,高度湾曲DNAの性質を示した。XhoIおよびEcoRIファミリ-配列に高親和性結合する非ヒストンタンパク質がニワトリの肝臓およびMSBー1細胞の核内に存在することを見出し,2種のその様なタンパク質の部分精製を行った。 2.転写不活性時のフィブロインH鎖遺伝子のクロマチン構造 カイコの5令期の中部絹糸腺,4眠期の後部絹糸腺ではH鎖遺伝子の転写は不活性状態にある。これらの絹位腺の単離核に比較的高濃度のDNaseIを作用させると,H鎖遺伝子クロマチンが規則的なDNA鎖長からなる分解物を与えた。この規則性がH鎖遺伝子中の結晶部領域に対応する繰り返し配列にヌクレオソ-ムが規則的に形成され,非結晶部配列が比較的スクレア-ゼ感受性となるためであることを示した。
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