研究概要 |
初年度では,コンパクト・ケ-ラ-多様体からコンパクト型の既約エルミ-ト対称空間への多重調和写像の安定性及び正則性について研究し結果として,フビニ・スタディ計量を持つ複素射影空間から正則両断面曲率が正のコンパクト・ケ-ラ-多様体への安定調和写像(これはいつでも多重調和写像になっている)は,正則または反正則であることがわかった。また,多重調和写像の構成についての基本的道具が整った。 二年度では,コンパクト複素多様体から複素グラスマン多様体への多重調和写像はすべてある正則写像から具体的に構成されるであろうという予想のもとに研究を行った。この予想はもちろん,領域がコンパクトリ-マン球のときにはすベての調和写像はある正則写像から具体的に構成されるというイ-ルス学派やチャ-ンとウォルソン等の結果にもとづいている.ここで,リ-マン面に対しては,調和写像の概念と多重調和写像の概念は全く同じものであることを注意しておく。よって我々の領域であるコンパクト複素多様体は第一チャ-ン類が正という付加条件が必要であることは明白である。結果として,領域を第一チャ-ン類が正のコンパクト複素多様体とし,値域をn次元複素線形空間の中のk次元線形複素部分空間がなす複素グラスマン多様体G_k(D^n)とするとき,kが1または2のときは完全に解決し,kが3または4のときはそれぞれ,nが14以下または15以下という条件のもとで解決された。 最終年度では,前年度で構成した多重調和写像が同変等長はめこみになっていると,B.Y.チェンが導入したスラント・イマ-ジョンの例を与えることがわかった。一般的な結果として,第2ベッチ数が1であるケ-ラ-C空間から複素射影空間への同変等長はめこみは,スラント・イマ-ジョンになることがわかった。
|