研究概要 |
テッポウユリの花粉を寒天培地で発芽させるには1mM CaCl_2、1mM H_3BO_3、0.3Mショ糖が、液体培地の場合には0.1mM Ca(NO_3)_2,0.5mM H_3BO_3,0.3Mショ糖(花粉密度、0ー3mg/ml)が必要であることがわかった。X線顕微分析法を用いたカルシウムとホウ素の微量分析は、花粉管試料が十分に作成できず、今後も引き続き検討する予定である。カルシウムが花粉発芽に必須であることより、カルシウム代謝に関連する化合物を検討した。EDTA、EGTAは花粉発芽を著しく促進した。またプロテインキナ-ゼCの阻害剤であるHー7も発芽を促進した。蛋白合成阻害剤であるシクロヘキシイミド(CHI)は花粉発芽阻害を完全に阻害するが、EDTAはその阻害を回復させる効果があった。これらの結果、カルシウムとEDTAが細胞壁あるいは細胞膜に何らかの作用を示し、花粉の発芽を促進することを示唆している。 ホスファチジルイノシト-ル(PI)の脂肪酸組成は発芽にともなって幾分変化した。主要な構成脂肪酸はホスファジルコリン(PC)などと同じく16:0、18:2、18:3であったが、発芽にともなって18:2、18:3が減少した。この変化はPCとは異なっていた。発芽花粉からPIの単離とその分子種の解析は現在行っている。 βー1,3ーグルカンは花粉管細胞壁の主成分であるが、その分解酵素であるβー1、3ーグルカナ-ゼについて検討した。花粉には本酵素活性が存在したが、酵素活性で追跡する限り成熟花粉と発芽花粉、あるいはカルシウムやホウ素の有無で活性にはほとんど差が認めれらなかった。そこで抗体を用いて本酵素の酵素量、局在性を検討するためユリの葉から本酵素の精製を試みた。その結果、分子量29000のモノマ-である本酵素を電気泳動的に単一な標品として得ることができ。現在本酵素を大量に精製し、抗体作成の準備を進めている。
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