研究概要 |
イヌ、ネコ、およびミンクに感染するパルボウイルスをわが国と中華人民共和国内の動物から分離し,主にそれらを試験管内で比較定性し,下記の成果を得た。大部分は原著論文として既に公表した。 1).ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPLV)TU1株、イヌパルボウイルス(CPV)Cp49株、およびミンク腸炎ウイルス(MEV)Abashiri株を用いてウイルス構造蛋白の比較分析をした結果、ほとんど同一の、三種のポリペプチドから成っていた。 2).FPLV TU1株に対するモノクロ-ナル抗体を作出し抗原解析を実施したところ、FPLV株、MEV株および1980年以前に分離したCVP株間の抗原性には差が認められなかった。例外として、パルボウイルスに共通する抗原決定基の一つを欠除する変異FPLV株が検出された。一方、1980年以降に分離されたCPV株は、それ以前のCPV分離株と明らかに抗原性が変化していた。この違いは細胞病原性にも認められ,1980年以前のCPVは試験管内における増殖性が極端に悪く,逆にそれ以降、1991年までに分離された株は細胞病原性が一般に増強されていた。 3).中華人民共和国内で産業飼育されているミンクから分離したMEVはわが国のAbashiri株とは抗原性が異なり、1980年以降野外で流行しているCPVと類似していた。 4).ネコ分離株のなかにはCPVと類似した抗原性を示す株が2株検出され、そのうちの一株はDNA制限酵素切断解析によりCPV株であることが強く示唆された。もう一方の株はこれまでの知見とは反し、イヌ細胞に強病原性を示した。 これらの成績は、食肉動物に感染するパルボウイルスは少しづつその性状に異にするも、一つの大きな集団(グル-プ)としてまとめられることを意味している。一方で,少しづつ変化していることも考えられた。
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