研究概要 |
研究補助金をうけた期間をとおして,生徒には分かりにくく教師には教えにくい「必要条件・十分条件」に関連する部分の言葉を調べ,具体的な提案にまとめた。分かりにくく教えにくい原因を,「数学の論理の難しさ」に求める先行研究はあるが,本研究では「言葉遣いにも原因があるのではないか」という観点から取り上げている。 平成元年度は,「であるための必要条件」「であるための十分条件」に使われている言葉の問題点を調べ,「である」「ため」「必要」「十分」「条件」が,「解釈を混乱させやすい組合せで用いられている」と言えることを明らかにした。 平成2年度は前年度の知見をもとに,この部分の書換え案をつくり,習う側がどう受け取るかを調査した結果,書換えにより分かりにくさが軽減できることが確かめられた。 平成3年度は,得られた知見を発表する作業にあてた。口頭発表のかたわら原稿を作成し,日本数学教育学会誌に投稿した(平成4年6月)が,採否についての回答を得ていない。 高木貞治博士は,「中学生が読まされる数学は,漢字と仮名とで書かれた擬装外国語なのではなかろうか」と述べておられる。これは,「現行の数学や論理の日本語表現には,数学教育上の問題点があるのではないか」という本研究の問題意識と共通している。しかし数学のむずかしさが,このような観点から議論される機会は少なかったようである。その点で本研究は,いくらかの新しさをもっと言えるように思う。
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