配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2003年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2002年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2001年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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研究概要 |
本研究では、非常に高いネール温度を示しGMR,TMR効果を示す多層膜中の反強磁性材料として注目されているL1_0型Mn系合金の基礎物性と電子状態を実験的に調べることを目的としている。 本年度は等比組成MnIrおよびMnRh合金を作製し、磁化、電気抵抗、低温比熱測定を行い、ネール温度電子比熱係数および電気抵抗率の組成依存性を詳細に調べた。MnIr合金については全ての試料においてネール温度以下で電気抵抗率が増加し、ギャップ型反強磁性体特有のハンプがみられた。ネール温度の値は等比組成近傍で最も高く、約1140Kであった。低温比熱測定から得られる電子比熱係数の値は等比組成近傍で約2mJ/mol-K^2の小さな値を示すが、他の擬ギャップ型反強磁性体MnT(T=Ni,PdおよびPt)等比組成合金に比べて大きな値であった。この結果はバンド計算の結果とよく一致する。以上より、MnIr合金がMn系合金の中で最も高いネール温度を示すこと、また、この合金系が擬ギャップ型反強磁性体であることを実験的に始めて明らかにした。以上の結果は日本物理学会および日本応用磁気学会で発表され、論文誌J.Magn.Magn.Mater.およびPhys.Rev.Bに掲載されることが決定している。また、磁化測定の結果より、L1_0型MnIr合金が大きな磁場中冷却効果を示すことが判明した。この挙動はMn組成の増加に伴い顕著であり、Irサイトに置換されたMnが比較的大きな磁気モーメントを有することに起因していると考えられる。この結果は日本物理学会で発表された。 さらに、本年度はL1_0型結晶構造を有するMnRh系合金の試料も作製し、磁化、電気抵抗および低温比熱測定を行った。この合金系は室温以下の温度領域でB2構造に構造相転移を起こすため、室温では常磁性体である。低温比熱測定から得られる電子比熱係数は約3mJ/mol-K^2と小さな値を示し、バンド計算の結果とよく一致する。この結果は、フェルミ面近傍に擬ギャップを有するバンド構造を支持する結果であり、他の擬ギャップ型反強磁性MnT(T=Ni,Pd,PtおよびIr)系合金と同様に、L1_0型MnRh合金も非常に安定な反強磁性的秩序状態を有していると考えられる。
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