研究分担者 |
宋 紹栄 東北師範大学, 日本研究所, 教授
何 艶如 東北師範大学, 成人教育学院, 教授
梁 忠義 東北師範大学, 比較教育研究所, 教授
王逢 賢 東北師範大学, 普通教育研究所, 教授
せん子 慶 東北師範大学, 歴史系, 教授
高橋 孝助 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (80091776)
小松 教之 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (40027694)
横須賀 薫 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (60006442)
SONG Shao-Ying Professor ; Northeast Normal University
HE Yan-Ru Professor ; Northeast Normal University
LIANG Zhong-Yi Professor ; Northeast Normal University
WANG Feng-Xian Professor ; Northeast Normal University
ZHAN Zi-Qing Professor ; Northeast Normal University
宋 紹英 東北師範大学, 日本研究所, 教授
何 艶茹 東北師範大学, 成人教育学院, 副教授
王 逢賢 東北師範大学, 普通教育研究所, 教授
せん 子慶 東北師範大学, 歴史系, 教授
小野 四平 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (20006399)
〓 子慶 東北師範大学, 歴史系, 教授
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研究概要 |
1,研究の目的 本研究は日本と中国において,一定地域を設定して,その地域の社会調査を行うことによって,地域における学校教育の機能と役割を明らかにしようとするものである。さらに共同研究を通して,中国における地域研究(面接,聞き取り,アンケート,統計処理等)の方法論の開発,定着に寄与しようとするものである。 2,対象地域の設定 両大学の共同研究の対象地域を次のように設定して共同調査を行った。 90年 中国 吉林省農安県農安鎮 日本 宮城県柴田郡柴田町 91年 中国 吉林省公主嶺市鳳饗郷泡子沿村 日本 宮城県亘理郡山元町 92年 中国 吉林省双陽県双陽鎮,吉林省図門市 日本 宮城県亘理郡山元町 3,調査の方法 中国の対象地域においては,主として聞き取り調査とアンケート調査によって,学校教育(小学校,中学校)に対する地域住民の教育要求を把握することを行った。あわせて,地域の生産状況を把握するために農業,工業に関する諸統計を入手し,その分析を通して,前記教育要求の諸傾向の発生する根拠及び背景を探ることを行った。 日本においては,主として対象地域の学校教育(小学校,中学校),社会教育の諸施設を見学し,教員等からの聞き取り調査を行った。あわせて,学校の教育課程に関する資料を入手し,その分析を通して,その学校の教育の地域性のあり方を探ることを行った。 4,調査の内容 (1)中国においては,全国的には小学校から初級中学への進学率は66.2%であるが,大都市周辺での初級中学の普及率はほぼ100%に近づいていることからみれば,農村地域においては初級学校の普及は進行段階にあるとみられる。中国では大勢としてみれば,人口の80%が農村地域に居住し,教員の70%が各種の農村地域の学校に勤務している。このことからすれば,初級中学を卒業後の進路の選択可能性,親の期待を探ることは,中国全体の近未来のあり方にかかわる大問題である。 この観点において,農村地帯町場の初級中学の生徒の親について行ったアンケート調査によれば,自分の子供が将来,大学に進学し,さらに外国へ留学するようになってほしいと期待しているものが66%に及ぶことが明らかになったことは興味深い。このような進学要求を支えているのが,将来の職業選択の期待として,医師が最多で30%,教師が20%で,合わせると半数を超えるということと関係している。驚くべきことに農業を希望,期待するものは皆無であった。 (2)上記のような親の教育要求,特にその「非農化」傾向は,中国の社会政策と深く関わっている。一つは人口抑制政策の強い影響があるが,さらには農業技術の近代化によって,農業部門における省力化が進行し,徒来のような労働力を必要としなくなって来ていることが教育要求における「非農化」傾向を促進いている。次に若者が農村を抜け出すことが出来る正規のルートは,各級政府が指定する大学,院校に進学するか,中等専業学校に進学する以外には無いことが教育要求における進学期待に拍車を掛けている。この方法以外には不正規のものとなり(中国で言う「盲流」),都市での正規の食料分配も受けられず,正業に就くことも出来ない。 (3)このように,中国においては学校が児童,生徒の発達・成熟を保証する機関であるよりは,都市(非農)への脱出ルートとなるという機能をより強く発揮していることが明らかになった。このことは当然,学校の教育内容及び方法に強く影響している。今後の共同研究においては,こうした社会事情の考察を継続するとともに,進学ルートの形成のかかわる諸要因の究明を行う予定である。
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