研究分担者 |
CHANーSU HOUC Department of Anthropolgy, National Museu, Specialist
丸山 伸彦 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助手 (90183623)
新井 勝紘 国立歴史民俗博物館, 歴史研究部, 助教授 (40222707)
宇田川 武久 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 教授 (70104750)
高橋 敏 国立歴史民俗博物館, 民俗研究部, 教授 (80163260)
岩井 宏實 国立歴史民俗博物館, 民俗研究部・民俗研究部長, 教授 (10110066)
HOUCHINS Chang-su Specialist, Department of Anthropology, National Museum of Natural History, Smit
HOUCHINS Cha Department of Anthropology, National Muse, Specialist
岡田 茂弘 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 教授 考古研究部長 (50150016)
CHANGーSU Hou Department of Anthropology. National Muse, Specialist
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研究概要 |
日本の近世末から近代初期に当たる19世紀に,日本から多量の文物が海外に流出したことは良く知られている。アメリカ合衆国でもボストン美術館等に多数の美術工芸品があり,ピーボディ博物館にモース・コレクションが収蔵されていることは著名である。これらの文物は,日本のどのような側面にアメリカ人が関心を抱いたかを具体的に示す好資料である。スミソニアン研究機構にも,日本に開国をもたらしたペリー艦隊乗組員の収集資料が民族資料の第1号として登録されており,日米の国交あるいは個人的な旅行を通じて収集した約8,000点の日本関係資料を所蔵し,そのうち約2,000点が19世紀に収集されたものである。しかしながら,日本関係集資料を研究するスタッフの不足や文献史料や美術工芸品以外の物質的資料に対する日本研究者の無関心等のため,これまで各々の資料について詳細な調査は行われていなかった。このため,我々のプロジェクトでは,ペリー艦隊収集資料(以下ペリー・コレクションという)を中心としてスミソニアン研究機構所蔵品を中心とした19世紀にアメリカ人によって収集された日本関係資料の実態調査を,平成2年度以来実施してきた。 平成4年度には,前年度までにペリー・コレクションの調査が一応終了したことを受けて,9月にスミソニアン研究機構側研究分担者のチャンスー・ハウチンズ夫人を招聘して,資料情報の整理,日本所在の関係資料の調査,スミソニアン研究機構が希望しているペリー・コレクションの日本での展示を含む今後の研究上の問題点整理を行った。その結果,展示については近い将来に企画展示「幕末日米交渉史」(仮称)を国立歴史民俗博物館その他で開催することとして,スミソニアン研究機構以外に所蔵されている関連資料の調査も行うことにした。 12月には日本側研究分担者3名が渡米して,1.スミソニアン研究機構の博物館支援センター(MSC)所蔵の日本前近代武器・武具の悉皆調査と国立自然史博物館内の人類学資料館が所蔵する日本関係スケッチ・写真資料等の調査,2.アメリカ東部各地の博物館収蔵のペリー艦隊日本遠征関係資料の調査ならびに目録作成を行った。その結果,MSCには,付属品まで完全に揃った甲冑が多数収蔵されており,多くは近世の作であるが中世の甲冑も1件有ることが判り,人類学資料館ではペリー艦隊乗組員が描いたと思われるスケッチ数点を発見した。また,ロード・アイランド州ニューポートでペリーの生家と墓所および関連資料を調査し,併せてメリーランド州アナポリスの海軍兵学校博物館およびワシントンD.C.の海軍歴史センターでペリー艦隊乗組員によるスケッチ21点等の資料とアメリカ合衆国内の諸機関が所蔵するペリー並びにペリー艦隊日本遠征に関する文書・記録等の史料の所在目録を入手した。 以上の調査によって,スミソニアン研究機構を始めとしたアメリカ合衆国東海岸での19世紀収集の日本関係資史料の所在の概要を把握することができた。これら東海岸の諸機関の資史料は,合衆国政府機関やその関係者が日本において収集したものである。それに対して,西海岸には日本開国後早い時期から日系人が移住しており民間レベルでの日米交渉が行われている。我々が,今後「幕末日米交渉史」に関する展示を企画するためには,日系移民関係の資料をも把握しておく必要が痛感された。 このため,3月に短時間ではあったが,研究分担者2名が渡米しカリフォルニア州ロスアンゼルスの全米日系人博物館・カリフォルニア大学ロスアンゼルス校(UCLA)アジア系アメリカ人研究センター,並びにユタ州ソルトレイクで長年日本語新聞を発行していたユタ日報社とにおいて,日系移民の文化変容とその資料について調査をおこなった。 3年間の調査研究を通じて,日米交渉史の初期における日米両国民のカルチャーギャップ,すなわち相手の文化や文物に対する関心や誤解について多くの研究資料を得ることができた。今後,「幕末日米交渉史展」等の具体的な企画に研究成果を反映させてゆく。
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