研究概要 |
直接通電と繰返し水噴射の組み合わせによる約1Hzの高い繰返し速度の下で熱疲労試験が可能な試験装置を製作し,高速増殖炉におけるサーマルストライピング現象をシミュレートした高サイクル熱疲労条件下におけるオーステナイト系ステンレス鋼のき裂進展挙動を調べた.レーザスペックルによるき裂開閉口計測システムにより熱疲労き裂の開閉口計測に成功した.これらの結果を一定温度,一定応力比のもとでの高温疲労き裂進展データと比較検討し,高温下での疲労き裂進展則を総合的に検討した.具体的な成果は以下の通りである. (1)表面に0.4mm程度の微小な半円初期欠陥を導入した厚さ10mmのSUS304試験片を用いて,表面で540±40℃を中心とする低中高の3種の温度変動を実現させ,き裂進展挙動を観察した.き裂は熱サイクルとともに進展したが,板内部方向には急速に速度を減じ停止する傾向が認められた.き裂の形状は進展とともに表面で長い偏平な形となった. (2)有限要素解析による,計測した温度分布をもとに,試験片内部の熱応力を求めた.さらに応力拡大係数をこの応力より算定し,熱応力サイクルでのき裂進展速度を整理,一定温度下での疲労き裂進展挙動との比較を行った. (3)試験片の表面が正反射しない粗面である場合に適用できるレーザスペックルき裂開閉口計測システムにより熱サイクル下で進展するき裂の開閉口挙動を計測した結果,高温水噴射という過酷条件下で計測が可能なこと,およびき裂最深部は進展とともに急速に開閉口レベルが上昇することが明かとなった. (4)き裂開閉口をもとに評価した有効応力拡大係数幅によれば,熱応力サイクル下でのき裂進展挙動と一定温度一定応力比下での高温疲労き裂進展挙動は良く対応づけることができる.
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