研究概要 |
本年度は昨年度製作したサ-マルストライピング試験装置をさらに改良し,種々の条件におけるき裂進展試験を行うとともに,その進展挙動を観察した.特に大年度はオ-ステナイト系ステンレス鋼の中でも耐環境特性の良好なSUS304Lを試験対象材料とし,高サイクル熱疲労領域の試験を行うために比較的小さい応力振幅条件下すなわち小温度変動条件下におけるサ-マルストライピング条件下のき裂進展を観察することとした.試験条件としては昨年度行ったと同様,試験片両端自由と両端拘束(圧縮荷重重畳条件下)の2種類とした.本年度の試験条件では試験部表面のごく表層において発生する熱応力のみが降伏応力を越え,試験の大部分の領域において弾性き裂となるような条件を実現することができた.この温度条件のもとで試験を行った結果,拘束・両端自由の両条件下ともある程度き裂が進展した後,繰返し数が数万回程度でき裂は停留した.停留き裂の長さは拘束条件下におけるものの方が短く,特に深き方向のき裂進展量は極度に少なかった.表面方向のき裂進展観察結果と,破面観察によるアスペクト比から深さ方向のき裂進展の様子を調べ,両方向のき裂進展速度を応力拡大係数幅で整理した結果,これらのデ-タは500℃下SUS304鋼における微小き裂の進展曲線と良い一致をみた.また進展停止後,レ-ザスペックル相関法によりき裂開閉口挙動を観察した結果,停留き裂の開口レベルは極めて高いことが明らかとなった.またこのき裂開口レベルからき裂停留時の下限界応力拡大係数を計算した結果,進展停止の条件についても単一温度単一応力比条件下で得られた値と良く対応していることが明らかとなった.
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