研究概要 |
1)アセチルコリンは,百日毒素感受性G蛋白(GK)を介し,特異的心筋細胞ムスカリン性Kチャネル(IK・Ach)を活性化するが,この活性は,G蛋白βγサブユニットによることが判明した。また,IK・Achの活性化には細胞内anion,Cl^-イオンが重要な役割を演じているが,その機序としてGKのGTPase活性調節によると考えられた。さらに,アラキドン酸及びその代謝物は,この心房筋G蛋白ーKチャネル(IK・Ach)調節系と連関するが,この活性化にはリポキシゲナ-ゼ代謝物によるGKの促進性修飾によると考えられた。また,この系はαーアゴニスト,血小板活性化因子など色々な膜受容体刺激によっても起こることがわかり,心機能調節の新しい細胞内機構として重要な役割を演じていると考えられた。以上,アラキドン酸代謝系とIK・Achチャネルとの連関を中心に,このチャネルのG蛋白による制御機構についても検討した。2)血管壁エイコサノイド系と血管平滑筋細胞増殖調節及びその病態生理学的意義につき以下の成績を得た。内因性エイコサノイドは血管平滑筋細胞増殖周期上G1休止期の持続に影響を得え,本細胞の増殖過程を自己調節する。さらに本フィ-ドバック機構はその調節制御機序を細胞レベルで有する。プロスタサイクリン産生異常と自然発症高血圧ラット平滑筋細胞の増殖増大との間には病態生理学的関係がある。また内因性プロスタサイクリン産生の刺激は遺伝的食塩感受性高血圧ラットにおける血管及び臓器障害を軽減し,一方,サイアザイド系利尿薬での降圧時には血管壁プロスタサイクリン産生が抑制され,血管及び腎障害の改善がみられない。さらに,G2休止期での平滑筋細胞体形成はカルシウム依存性であり,トロンボキサンは細胞体形成を促進して細胞増殖を亢進し,一方,カルシウムチャネル拮抗及びアンジオテンシン変換酵素阻害薬は本周期蛋白合成を抑制し,平滑筋細胞増殖を低下させる。
|