研究概要 |
現在までの褥瘡に関する実験・調査等による研究過程から,褥瘡の発生は皮膚と骨に近い組織によると予測し,その実証デ-タを得るために,平成2年度は予備実験・予備調査を実施した。その結果をもとに,臨床実験と調査を平成3年度に行い,次の結果を得た。なお,実験・調査の対象は4病院の褥瘡のある高齢患者(褥瘡高齢者)25名,褥瘡になり易い高齢患者(易褥瘡高齢者)15名,及び普通生活をしている健康な高齢者(健康高齢者)8名である。 1.栄養・貧血に関する血液検査値は,全項目ともに褥瘡高齢者・易褥瘡高齢者の方が健康高齢者より,有意に低い。 2.サ-モグラムによる皮膚温は,健康高齢者は体位変換直後の温度より,10分後の方が低下しているが,褥瘡・易褥瘡高齢者のそれは,10分後の測定値に上昇がみられた。 3.褥瘍・易褥瘡高齢者の深部温(10mm)は,仙骨近位部(仙骨部),中殿筋部ともに,体位変換直後より10分後の方が上昇している。 4.健康高齢者の深部温は,臥床前では仙骨部の方が中殿筋部より高いが,体位変換直後のそれは中殿筋部の方が仙骨部より高く,しかも,温度の上昇幅の値も中殿筋部の方が大きい。 以上から,褥瘡ができる状況のときは,発赤や表皮剥離が起こる以前から,骨に近い組織に変化が生じているものと考えられる。また,組織を形成するタンパク質が不足し,組織に栄養を供給する血液の組成が不十分であれば,体圧などで血液の供給が悪くなった組織に壊死変化が生じやすいので,これに対応する看護技術の検証が,今後の課題である。
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