研究概要 |
研究成果の概要は以下の通りである。 1)日本国内の6ヵ所の畑土壌から分離された単離株のゲノムDNAのサザンブロットに対してnifDK,hup,RSα・RSβをプローブとしてハイブリダイゼーションを行なった膨大なデータを解析したところ、土着ダイズ根粒菌の遺伝的変異の右向や集積速度は圃場によって非常に異なっていることが明らかとなった。このような変異には、共生細菌に特有な宿主植物の有無や種類が大きく影響していると推定された。 2)宿主親和性を検討した際得られた126単離株を対象として、nodDYAB遺伝子(根粒形成共通遺伝子)周辺の塩基置換度を調べたところ、8種類のnodRFLPグループに整理されたが、パターンの類似性から大きく3つのグループ(nod group A,B,C)に分けることができた。nod group Aはダイズから、nod group Bはダイズとサイラトロから、nod group Cはサイラトロのみからの単離株であった。宿主植物根への根粒形成シグナル物質である。Nod factor(リポオリゴサッカライド)の分析を行ったところ、nod group A,Bの単離株は、いずれもダイズに特異的なNodfactorであるNodBj-V(C_1:18Me-Fuc)を生産していたが、nod group Cは別のNod factorを生産していた。RSフィンガープリントでは多様にみえる土着ダイズ根粒菌群も宿主特異性に関わるnod遺伝子とNod factor生産でみると極めて単純であった。nod groupと系統の関係は、nod group Aが系統Iに、nod group B,Cが系統IIに対応していた。 3)Bradyrhizobium属根粒菌全体の中で、ダイズ根粒菌であるBradyrhizobiumの系統I、IIがどのような位置を占めるのかを調べるために、Bradyrhizobium spp.と系統I、IIの遺伝型および表現型を比較したところ、Bradyrhizobium japonicumの系統I、IIはBradyrhizobiumの中でも均一性の高い小さい集団であることが判明した。 4)3年間の結果より、土着Bradyrhizobium属根粒菌群の生態を系統I、IIに着目し、DNAハイブリダイゼーション法で調べる方法を確立した。DNAハイブリダイゼーションのためのプローブは、nifDK,nodDYAB,hup,RSα,RSβが最適であった。また、ダイズ根粒菌の系統の判定には、インドール酢酸の生成法が簡便で正確であった。
|