研究課題/領域番号 |
02555153
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研究種目 |
試験研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
金属材料
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大坂 敏明 早稲田大学, 理工学部, 教授 (50112991)
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研究分担者 |
粕壁 善隆 東北大学, 教養部・物理学科, 助手 (30194749)
矢田 雅規 科学技術庁, 金属材料研究所・構造制御部, 研究員 (00182353)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
9,700千円 (直接経費: 9,700千円)
1991年度: 4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
1990年度: 5,400千円 (直接経費: 5,400千円)
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キーワード | ヘテロ構造 / ヘテロエピタキシャル成長 / 無極性物質 / 極性物質 / 極性の伝播 / 表面超構造 / Sb trimerモデル / 表面構造解析 / 電子回折 / InSb(111)B-(2×2) |
研究概要 |
平成2年度は、Insb/αーSn/InSb系ヘテロ構造について極性物質を介した極性物質の成長に着目し、特に極性の伝播の機構を明かとした。その結果の概略を以下に示す。 (1)InSb(111)Aと(111)B基板を超高真空中で加熱清浄化およびホモエピタキシャル成長させ、十分に清浄な表面を得た。その後、50℃に保持したこれらの基板上へSnを蒸着した。さらにこのSn膜を所定の温度に昇温、保持し、その上へInsbをヘテロエピタキシャル成長させた。なお、これらの成長膜の構造観察にはRHEEDを、組成分析にはAES/ELSを用いた。 (2)αーSn/InSb{111}上におけるInSbの成長を、αーSnの膜厚を変化させて観察した。まず、αーSnの膜厚が大きい場合(20ML以上)、αーSn/InSb{111}の表面は、3×3構造を示し、その上でのInSbの成長は基板側の極性に影響されずにバルクαーSn結晶上のInSbの成長となる。この時InSbはA面で成長し、また、InSb/αーSn界面はInーSn結合となることがわかった。 (3)一方、αーSnの膜厚が小さく、10ML以下の場合については、基板側のInSb{111}の両極性を受け継いでInSbが成長する。この極性の伝播には、Sbの存在が深く関わっていることが明かとなった。InSb{111}上におけるSb膜の成長を詳細に調べると基板が(111)Aの時には、その界面が急峻であるが、(111)Bの時には、InSbの表面のSbがαーSn中へ拡散し、なおかつ膜厚が小さいうちはSn表面にやや濃化していることが判った。このSbはαーSn(111)面上でterminateした構造をとり、その表面は1×1周期となる。この上にさらにInSbを成長させるとInSbはB面で成長する。つまり、基板側の極性が伝播することになる。ところが、急峻な界面をもつαーSn/InSb(111)A上では、αーSn表面が本来の3×3超構造表面を持つので、InSbを蒸着するとA面で成長する。以上のように、本研究において、InSb/αーSn/InSb系ヘテロ接合において、極性の伝播するメカニズムが初めてつきとめられた。 平成3年度は、極性伝播のメカニズムに関するより詳細な知見を得るために、出発基板表面として利用したInSb(111)Aー2×2およびInSb(111)Bー2×2の表面構造を電子回折法により明かとした。その結果の概略を以下に示す。回折強度測定の結果、Aー2×2表面とBー2×2表面は異なった構造を持つことが明らかになった。さらに、Patterson解析からいくつかのモデルを導出し、今までに提唱されているモデルとあわせて最小二乗法を用いて最適化を行った。 (1)InSb(111)Aー2×2 InSb(111)Aー2×2の強度分布は、全反射X線回折法等によって提案されているVacancy buckling modelから期待される強度分布と極めて良い一致を示した。したがって、InSb(111)Aー2×2の構造は、このmodelを基本構造として持つという従来の結果が支持される。 (2)InSb(111)Bー2×2 InSb(111)Bー2×2の強度分布は、InSb(111)Aー2×2のそれとはおおきく異なり、独自の構造を持つことを示唆した。強度解析の結果、Sb最外層のT_4サイト上にSb trimerが吸着したモデルのみが信頼度因子(R)が12%となり、モデルから計算される回折強度の値と測定値との違いは測定誤差のオ-ダとなった。このモデルは、他の実験結果(AES、理論計算等)からも支持される。
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