研究概要 |
中高エネルギー重イオン反応の研究 (1) Quantum Molecular Dynamics(QMD)法を用いた研究で,初期条件の安定化に成功し,QMD法としては始めてフェルミ・エネルギー以下までも含む広いエネルギー領域の記述を可能とした。 動力学的過程で生成されたクラスターの蒸発過程を多段階統計崩壊理論を用いて計算した。この現実的なQMD計算は,我々のグループが始めて行った。 核融合反応,深部非弾性衝突でのWilczynski図,軽い放出クラスターのエルネギースペクトル,生成クラスターの質量数分布,入射核破砕片のスピン偏極,高エルネギーγ線の発生,バランスエルネギー近傍および以下での核物質流,などの種々の反応過程の実験データの再現に成功した。 (2) QMD法を含む従来の理論は全て古典力学的である。 我々のグループは世界に先駆けて量子力学的な微視的シミュレーション理論の建設に成功した。 これを反対称化分子動力学(AntisymmetrizedMolecular Dynamics,AMDと略称)と名付けた。 殻効果の記述が可能となり,QMD法では記述できなかったαクラスターの動力学的生成の大きな断面積の再現が可能となった。生成クラスターの室量数分布,運動量分布が計算され実験との見事な一致が得られた。 (3) AMD法において基底状態の波動関数の構成には摩擦冷却法が用いられる。 これは全く新しいユニークな波動関数構成法研究手段の導入をもたらした。 中性子過剰核の構造の研究に用いられ,磁気能率の系統的再現に始めて成功するなどの成果が既に得られた。組み替え反応の研究 6〜8核子系に於いて現象論的要素を入れず多数のチャネルを結合させる微視的計算を行い,特に全反応断面積の再現に成功し,反応機構の解明を大きく進めた。 最も重要な点は,一核子移行の組み替えチャネルの効果の不可欠性で,つぎにpseudo stateを重陽子などに導入することである。
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