研究概要 |
ワカメの有用形質保存法としての組織培養に適したワカメ組織の部位と培地組成および種苗化に適した培地組成と培養条件についてそれぞれ検討した。培養用好適組織としては,櫛葉部形成部位から藻体の先端にかけて最大葉幅部位までの区間の中肋だった。それ以外の部位の中肋も組織培養には用いることが可能であるが,カルス形成能が櫛葉形成部位に比べて劣ること,無菌化処理がしにくいこと等から不適だった。基本培地としては,PESIが簡便で効果があった。カルス形成用植物ホルモンとして11種(オ-キシン系7種,サイトカイニン系3種,その他1種)を用いた。これらの内,カルス形成頻度が高かく有効と認められたのはオ-キシン系3種(3ーIndoleacetic acid,3ーIndolebutyric acid,2,4ーDichlorophenoxyacetic acid),サイトカイニン系2種(6ーBenzylaminopurin,Kinetin)だった。これらの内,より低濃度で安定した効果を示したのは2,4ーDichlorophenoxyacetic acidだった。カルスからワカメ種苗形成に必要な芽胞体の形成が認められたのは,オ-キシン系のpーChlorophenoxyーacetic acidとサイトカイニン系の6ーBenzylaminopurineだったが,その有効濃度は前者では1μg/l以下だったのに後者では100μg/l以上の濃度のときだった。オ-キシン系とサイトカイニン系とでカルス形成と芽胞体形成に対して有効濃度が相違するが,その理由については今回の研究から明らかにすることはできなかった。培養条件としては,温度は180℃〜25℃,光条件としては1,500lux〜8,000luxの間であればカルス形成,芽胞体の形成に問題はなかった。 これらの結果から,オ-キシン系の3ーIndoleacetic acid,pーChlorophenoxyacetic acidとサイトカイニン系の6ーBenzylaminopurineを組み合わせればワカメの組織から種苗を生産することが可能であると考えられる。また,2,4ーDichlorophenoxyacetic acidの有効性については今後の検討が必要である。
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