研究概要 |
1週齢のラットの卵巣とヤギ卵巣組織片の低温保存を試みた。ラット卵巣は保護物質として2Mグリセロールを使用した緩慢冷却法または一部改変したRallらのVS1を使用したガラス化法により冷却し,液体窒素中に保持した後加温し,段階的希釈法または0.5Mサッカロース加PBSによる希釈法で保護物質を除去した。冷却・加温後の卵巣は組織学的観察により保存状態を検討し,ガラス化法については移植,器官培養法により生存性を検定した。ヤギ卵巣組織片は2Mグリセロールまたは1.5MDMSOを保護物質として使用した緩慢冷却法,またはVS1を使用したガラス化法により冷却し,加温後,段階的希釈法または0.5Mサッカロース加PBSによる希釈法で保護物質を除去した。冷却・加温後の組織は光顕または透過型電顕により組織の観察を行なった。対照として無処理の卵巣と保護物室の添加・除去のみを行なった卵巣,組織片の組織学的観察,生存性検定も行なった。ラット卵巣の低温保存では,ガラス化法により冷却した卵巣で緩慢冷却に比ベて組織構造が良く保たれていた。ガラス化冷却後,器官培養した卵巣では生存卵胞が観察されたが,無処理の卵巣や保護物質の添加・除去のみを行った卵巣に比べて少数であった。ガラス化冷却後の卵巣を移植したラットでは,産仔を得るにはいたらなかったが卵巣組織の発育と内分泌機能が認められた。以上の結果よりガラス化冷却後の卵巣で生存性が認められた。ヤギ卵巣組織片の低温保存では,DMSOを保護物質とした緩慢凍結で組織構造,細胞内微細構造が良く保存されたいた。グリセロールを保護物質として使用した緩慢凍結とガラス化冷却後段階的に希釈した場合は損傷が大きく,ガラス化後サッカロース加PBSにより希釈を行った場合は多くの卵胞では損傷が認められたが一部の卵胞では細胞内微細構造が良く保たれていた。
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