研究概要 |
本研究を通して次のような事項を明らかにすることができた。 1.食品添加物の一つであるオイゲノ-ルは,マウスに単独投与したきは,きわめて弱い急性毒性しか示さない。しかし,あらかじめグルタチオンの生成合阻害剤であるブチオニンスルフォキシイミン(BSO)を投与して組織のグルタチオンレベルを低下させたマウスに,オイゲノ-ルを経口投与すると激しい肝障害が発生する。 2.この肝障害は種々の薬物代謝酵素阻害剤の投与によって抑制される。したがって,肝障害の発現にはオイゲノ-ルの代謝的活性化反応が関与しているものと考えられる。 3.オイゲノ-ルの肝毒発現に関与している活性代謝物の化学構造を明らかにする目的で,オイゲノ-ルおよびそれと化学構造の類似した4種類の化合物(メチルオイゲノ-ル,ジヒドロオイゲノ-ル,サフロ-ル,シャビベトル)をBSOと組み合せてマウスに投与し,肝毒性の強さを比較した。その結果肝毒性の発現に必要な構造上の条件は,ベンゼン環上の1,4位にフリ-の水酸基とアリ-ル基が配置されていることであると判明した。 4.以上の結果から,オイゲノ-ルが酸化的に代謝反応によってキノンメチド型の活性代謝物を生成し,これが肝組織と共有結合を行うことによって肝毒性の発現にいたるとする代謝経路を推定することができた。
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