研究概要 |
これまで,昆虫を取り扱う職業歴を持たない一般の気管支喘息患者の多数に蝶・蛾,トビケラ,ユスリカ等の昆虫抗原に対するIgE抗体が検出されることから,これらの昆虫が気管支喘息の原因抗原として普遍性を有していることを推測してきた。一般に臨床診断に用いるアレルゲンは粗抗原であり,多くの抗原成分からなっている。上記の昆虫抗原や同様に陽性率の高いダニ抗原も多数の成分から構成されているので、本研究においては,ダニ,蝶・蛾,トビケラ,ユスリカの間での交叉反応性の有無および主要感作抗原分画を分子レベルで検討した。 ダニ抗原は鳥居薬品の乾燥凍結粉末を用い,昆虫抗原はすでに報告した理由により,蝶・蛾の代用としてカイコ蛾翅抽出液,トビケラはトビケラ翅抽出駅,ユスリカはユスリカ全虫体抽出液を用いた。これらの抗原をSDSーPolyacrylamide Gel電気泳動を用いて分子量の大きさ別に分画し,ニトロセルロ-ス膜に転写後患者血清のIgE抗体と反応させ,Immnostaring法によりIgE抗体が結合した各々の主要感作抗原分画を調べた。また、CNBr活性化Sephalose 4Bに結合された抗原カラムで患者血清を吸収し,上記と同様の方法で抗原間の交叉反応性分画を決定した。 個々の気管支喘息患者血清を用いて検討すると,感作抗原分画は個々の患者で異なっており,多様な感作状態が明らかになった。そこで,11例の患者血清を等量ずつ混合した血清を用いて検討した。ダニの主要感作抗原分画は94から15Kdまで多数存在した。一方,カイコ蛾翅は68,64,33,21Kd,トビケラ翅は68,48,30,14.4Kd,ユスリカ全虫体は64,26,24Kdが主要感作抗原分画と推定された。各々の抗原で吸収した混合血清での検討では,上記の昆虫主要感作抗原分画のほとんどが各々の昆虫抗原によって吸収され互いに交叉反応性を示したのに対し,ダニと昆虫間では非吸収分画が存在し,互いに独立した感作抗原分持っていた。
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