本研究代表者は、既に、昆虫を取り扱う職業歴を持たない一般の気管支喘息患者の多数(約40%の気管支喘息患者)において蝶・蛾、トビケラ、ユスリカ等の昆虫抗原に対する特異的 IgE抗体を検出し、気管支喘息の原因として、ダニに次いで普遍性を有し重要なアレルゲンであることを推測してきた。しかし、まだ種々の問題点がそんざいする。即ち、1.上記の昆虫抗原に対するIgE抗体が検出される患者の大部分はダニに対するIgE抗体を同時に保有していることであり、また、単一の昆虫のみに感作された患者は少数でありほとんどの患者は2種類以上の昆虫に対するIgE抗体を持っていることから、ダニと昆虫の間で、また、昆虫間で交叉反応性の有無と昆虫によるアレルギ-の独立性を調べなければならない。2.しかし、一般的に気管支喘息のアレルゲンは単一の成分からなっているのではなく多数の成分からなっているために、ダニと昆虫、また、昆虫の間での交叉反応性と独立性を検討するためには、各々の抗原をSDSーPAGEで分画し、分子レベルで検討しなければならない。 そこで、カイコガ翅(チョウ・ガの代表としてのアレルゲン)、トビケラ翅、および、ユスリカ全虫体をSDSーPSGEで分画し、ニトロセルロ-ズ膜に転写した後、RASTにてカイコガ翅、トビケラ翅、および/または、ユスリカ全虫体に対するIgE抗体価が高い12例の気管支喘息患者の血清を反応させ、各々の患者が昆虫アレルゲンのどの分画の抗原に感作されているかを調べた。その結果、12例の気管支喘息患者は、各々、異なった分子分画に感作されており、昆虫による感作は多様性に富んでいることが判明した。次年度においては、昆虫の主要な感作抗原分画(50%以上の患者を感作している分画)を見いだし、その抗原交叉反応を分子レベルで検討する予定である。
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