研究概要 |
感染性寄生原虫のプロスタグランジン産生系を分子生物学的に同定するために、研究対象を熱帯熱マラリアから大量の試料の供給が可能なTrypanosoma属の原虫に変更して研究を継続した。そして、T.bruceiプロスタグランジンF_<2α>合成酵素の遺伝子が染色体当たり1コピーしか存在しないことを確認し、その遺伝子を含む8kbの染色体DNAのBamH1断片を単離した。さらに、ネオマイシンおよびブラスチシジン耐性遺伝子を用いた相同的遺伝子組換え法を用いて、本酵素の遺伝子ノックアウト原虫を作製した。その結果、ノックアウト原虫は、本酵素の触媒するP-nitrobenzaldehyde還元活性の80%と9,10-phenanthrenequinone還元活性の50%を失ったが、プロスタグランジンF_<2α>合成酵素活性は25%しか低下しなかった。従って、T.bruceiは、本酵素以外にもプロスタグランジンF_<2α>合成酵素を持つことが明らかになった。ひきつづき、T.bruceiプロスタグランジンF_<2α>合成酵素のX線結晶構造解析を進め、結晶化条件の改善により、2.1Å分解能の三次元構造座標を決定した。また、T.cruziに対する殺虫作用を持つ薬草成分として発見されたコマロビキノンT.cruziプロスタグランジンF_<2α>合成酵素により1電子還元を受けて、セミキノンラジカルに変換され、さらにスーパーオキシドアニオンラジカルを生成して殺虫効果を誘発することを証明した。
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