研究課題/領域番号 |
02J00038
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
哲学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
須長 一幸 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2004年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2003年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2002年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | フレーゲ算術 / 論理主義 / ヒュームの原理 / フレーゲ |
研究概要 |
本研究の目的は、フレーゲ算術を端緒として、我々の論理・算術への理解の構造を探ることであったが、今年度の研究は主に、新・論理主義によるフレーゲ算術理解への評価と、論理主義の帰趨をめぐる議論のサーヴェイに充てられた。 ヒュームの原理を公理Vに代わる論理的な公理とし、フレーゲ算術を論理主義の再興として見なすという立場(C.Wright等)に対する主な批判は、ヒュームの原理自体が孕む問題を指摘するもの(DummettによるBad Company Objection等)であるが、そもそもフレーゲにとっての論理主義、つまり算術の論理への還元とはどのようなものでなければならなかったか、を再検討することで、フレーゲにとってヒュームの原理は論理的公理たりえなかったことを示す議論がある(M.Ruffino)。Ruffinoによれば、フレーゲにとって論理学とは諸概念間の関係を扱うことができるがゆえに広く応用可能な学たりえたのであり、そして概念間の関係について扱う以上、概念の同一性を与える条件が不可欠であった。しかし、言語的桎梏のゆえに、われわれは概念について直接語ることは出来ず、概念を「概念の外延」という代理物を用いて間接的に語ることしができない。そこで本来与えられるべき概念間の同一性条件を、代理物である「概念の外延」を用いて表現し直したものが公理Vである。かくして、Ruffinoによればフレーゲの論理主義にとって公理Vは必要不可欠であり、Wrightらによる論理主義の再興は、少なくとも論理とは何であるかに関するフレーゲの認識による限り、認められるべきものではない。 フレーゲによる論理把握とは異なる論理観を提示しない限り、新・論理主義は維持し得ないが、フレーゲによる論理観や、あるいはいわゆる伝統的論理観(G.Boolos)に代わる論理観を新・論理主義者たちが提示し得ているとはいまのころ考えられない(N.Tennantがこうした方向を模索している)。かくして、新・論理主義によるフレーゲ算術理解は、フレーゲ算術への評価としては妥当なものではない。以上の結論が、今年度の研究で得られた知見である。
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