研究分担者 |
RUSEN KELES アンカラ大学, 政治学部, 教授
若林 芳樹 金沢大学, 文学部, 助教授 (70191723)
水内 俊雄 富山大学, 人文学部, 助教授 (60181880)
山本 健児 法政大学, 経済学部, 教授 (50136355)
堀川 徹 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (60108967)
中林 一樹 東京都立大学, 理学部, 助教授 (80094275)
山口 真 流通経済大学, 社会学部, 教授 (50166625)
KELES Rusen アンカラ大学, 政治学部, 教授
FLUCHTER Win デュイスブルグ大学, 第6専門領域地理学系, 教授
足立 信彦 東京大学, 教養学部, 助教授 (10175888)
古石 篤子 慶応大学, 総合政策学部, 助教授 (20186589)
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研究概要 |
1.イギリスではロンドンにおける代表的なトルコ人の集中地区であるイシュリントンとハックニー地区において女性の社会的地位と識字率についてアンケート調査を行った。ここでは言語能力の程度が各種の活動の制約条件となっている。トルコ人の絶対数が少ないこの都市では多数を占めるアフルカ,カリブ海,アラブ系の人々の間に埋没しているように見える。しかし,ここでは旧植民地であったキプロスからの移住者が多いことが大陸諸国と違う点であり,彼らが最近増加しているクルド系の難民とどのように異なって存在するかは今後の課題である。 2.ドイツにおいては,主としてベルリン,ケルン,シュツットガルト,デュイスブルグ,ミュンヘンの大都市において昨年度に引き続いて調査を行い,多くの資料を収集することが出来た。トルコ人の社会的な状況がつかめた。居住の隔離現象についても正確に把握することが可能となった。それぞれの都市において,トルコ人の居住区が形成される過程は各都市の発達史と産業構造および都市構造を反映したものである。基本的に彼らは工業労働者であるから住宅地区の施設,公共住宅の形成,企業の社宅などの分布を反映している。その集積のうえに外国人として最も人口が多いゆえに,トルコ人社会を相手とする様々なトルコ人によるトルコ人のためのサービス産業が成立するのである。デュイスブルグの例はその典型である。その点においてマグレブ系の人々の社会的施設を利用できる少数派のフランスの場合とは空間構造が異なる。 文化的社会に異質な集団が形成されることにより,本国以上に宗教への回帰が強まり,モスクの必要性が高まるが,ドイツ諸都市内部におけるその存在形態もまたトルコ人の集積規模の差が反映してくる。また,社会への統合に向けてさまざまな組織が動いているが,州による差異も大きい。ここでも学校教育が最も基本的であり,一般にトルコ人の子弟の教育水準は低いが次第に改善されつつある。上級学校への進学率には地域差が大きい。ドイツ統一後,難民が増加するなかで反外国人感情の高まりは第1にトルコ人に向けられ,その地位は微妙に変化している。 3.トルコにおいては,本年度は都市構造を捕らえる一つの方法としてインテンシブな調査を,主としてアンカラ大学2つの異なる学部の学生を対象として都市のイメージ調査を行った。彼らがアンカラの街を空間的にどのように捕らえているか,個人の属性の差異,すなわち基本的にはアンカラ出身者と地方出身者,さらにドイツなどからの帰国子女という集団の差がどう認められるか。これは現在まだ分析中である。全般的には地図情報と乏しいこの国において正確な空間像を求めることには無理がある。これは職業運転手においても地図を描くことに困難を感じているところ端的に現れている。距離と方位との歪みは大きい。とくに南北が逆転して捕らえられていることの意味付けが課題となる。しかしながら,トルコ国内の都市の認知に関してはアンカラ市内のレベルよりは確かであり,これは教育水準の問題として捕らえられる。都市については人口規模とともに国境付近の周辺部に位置する都市の重要性が高く,内陸部の都市については位置の手掛かりが少ないためにあいまいさが大きい。住みたい都市についてもアンカラ大学の学生のためにかアンカラが飛び抜けて高く評価されているのが目につく。 居住の関係では,アンカラ市内における居住地の移動を調べた。地方出身者が多くかなりの頻度での移動が認められる。都市内の地名の認知と居住地の選好との関連が課題となる。また移動に使われる交通手段がそれに作用する。住みたい場所についても明確な傾向が認められる。これらは学生よりも企業の事務職員,タクシー運転手,ホテル従業員,市場の商人,大学関係者などの幾つかの社会階層からデータを集めた。日本人学校についても調査の協力を得て,個体数は少ないが児童にアンカラの手がき地図を描いてもらった。居住地区が限定されていることからくる歪みと,親の行動圏からくるそれとによって予想された以上に狭い範囲に認知が限られていた 。
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