研究概要 |
(1)吸着によるトレース元素の予備濃縮:各種機能性吸着体を用いる金属元素の分離濃縮法について,活性炭,多孔性ポリマー,錯生成吸着体,天然高分子に分類して,著者の研究を中心に,最近の研究を概説した。 (2)ジチオカルバメート(DTC)-キチンを合成し,金(III),パラジウム(II).ルテニウム(III)の吸着挙動を調べ,金,パラジウムは6M塩酸溶液からpH9の範囲で定量的に吸着されるが,ルテニウムはpH3.0〜4.5の範囲でわずかに40%しか吸収されないことを見出した。金は5%チオ尿素を含む1M硝酸で溶離されるが.パラジウムは1.6倍に希釈した逆王水でしか溶離されなかった。 (3)水中のトレースレベルのリチウムを,そのテノイルトリフルオルアセトン(TTA)錯体にして,12-クラウン-4との協同効果により0-ジクロロベンゼンに抽出したのち,逆抽出して炎光光度法により定量する方法を確立した。1000倍のCa,Mg,10000倍以上のNa,Clイオンが存在しても妨害しない。 (4)水中のトレースレベルのリチウムをTTA錯体にしてリン酸トリブチルに抽出することにより,他元素から分離する方法を確立した。100〜1000倍量のNa,Ca,Mg,Cl,SO_4イオンが存在してもそれらは妨害しなかった。 (5)ポリ(クロロトリフルオロエチレン)樹脂(PCTFE)への金属の8キノリノールスルホン酸錯体,ビスムチオールII錯体などの吸着挙動を綿密に検討し,吸着のメカニズム,実際試料への適用などを行った。 (6)鉄(III)のフェロジン錯体及びコバルト(III)のニトロソ-R錯体がPCTFE樹脂へ捕集されることを見出し,それらの最適な吸着条件を検討して実際試料の分析に適用した。
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