研究概要 |
1.ニホンナシ果実の成熟,収穫期,貯蔵性とエチレン生成との関係について調査した。エチレン生成量の多い品種ほど早生性で貯蔵性も劣った。晩成品種はエチレン生成量が少なく貯蔵性もすぐれていた。 2.エチレン生成量の多い果実は,エチレン前駆物質ACCが多く,またエチレン生成酵素EFEのの活性も高かった。‘二十世紀'と‘新興'はACCが多くEFE活性が高いにもかかわらずエチレン生成が少ない特異な品種であった。 3.エチレン生成の多少と果肉細胞の液胞膜活性との関係をみたが,ATPase,PPaseのいずれもエチレン生成に関連した動きを示さなかった。‘二十世紀'のエチレン生成が少ない原因は液胞膜の活性が高いためではなかった。 4.晩生品種のエチレン生成量が少ない原因の一つは,ACCがマロニル化され,不活性な化学物M-ACCになることに基くことが認められた。 5.エチレン生成の多少とポリアミンとの関係について調べたところ,プトレッシンはエチレン生成と成熟を抑制し,スペルミジンはエチレン生成と成熟を促進することが明らかにされた。 6.エチレン生成特性からニホンナシ品種を類別すると4つのタイプに分れることが明らかになった。Iタイプ:エチレン生成多,ACC多,EFE活性高(新水・幸水・菊水),IIタイプ:エチレン生成少,ACC多,EFE活性高(二十世紀・新興)IIIタイプ:エチレン生成少,ACC少,EFE活性低(今村秋・晩三吉・新雪)IVタイプ:エチレン生成量極多,ACC多,EFE活性高(長十郎・幸蔵・赤穂)
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