研究概要 |
本研究では,最近登場してきた新しいシステム-イメージングプレートを利用することにより,高分子の構造解析の様々の面への適用の可能性を明らかにしてきた.(1)高分子の構造解析を遂行していく上で必要なX線広角反射測定,小角散乱測定,張力や温度変化など外部場下でのX線回折測定,さらには単結晶構造解析と,あらゆる方面に利用可能な,いわば「万能のX線イメージングプレートシステム」を設計試作し,実際に様々の面に適用,これが非常に有用であることが判明した.(2)コンピューターグラフィックスの利用による,極めて簡便,かつ単位格子決定や積分強度定量評価の上で必要な高精度データの取得を可能とする,まったく新しい高分子結晶構造解析システムを開発することに成功した.(3)ポリジアセチレンを例とし,合成高分子単結晶としては初めて,イメージングプレートを用いた十分高精度の構造解析を行うことができた.(4)張力下のX線回折測定を,イメージングプレート回転方式を利用して広角範囲で行った.斜方晶型ポリエチレンの結晶弾性率を,従来の(002)反射に加えて(004)反射についても測定することに成功し,高い精度でもって決定することができた.(5)加熱試料台を試作し,イメージングプレートシステムと組み合わせることによって,フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体および強誘電液晶性高分子の強誘電結晶相転移における結晶および液晶構造変化さらにはドメイン構造の変化まで,詳細な情報を得ることが出来た.(6)広角散乱と小角散乱を一枚のイメージングプレート上に記録することに成功し,ポリテトラメチレンテレフタレート試料の張力誘起結晶相転移現象について,その有効性を確認した.高分子の結晶構造,高次組織と物理的性質の密接な関わりを分子レベルから解明する,高精度の新しい方法論として提案した. 今後は,こうして開発された様々の技術を利用し,様々の高分子物質について,その結晶構造を十分な精度でもって解析するとともに,様々の物理的性質をX線回折測定を通じて求めていく予定である.
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