研究概要 |
本年度は、上記研究課題のもと,分与行動に関する実験的研究を行った。被験者は,幼稚園の年中(5歳と6歳)児60名であった。実験変数としては,(1)モデリング,(2)動機的コスト,の2つであった。(1)については,分与モデル:分与行動をする子どもの紙芝居を見る群と,中性的行動をとる子どもの紙芝居を見る群,(2)については,被分与者(成人)が課題解決のため必要とする事物の不足を訴え困窮しているとき,迷路遊びが課される群と,迷路遊びを待たされていて,さし当り為すべきことがない群,とを設定した。実験の流れとしては,(1)モデリング,(2)社会的相互作用,(3)動機的コストの操作,(4)実験的テスト事態(分与行動を必要とする事態)であった。依存変数としては,大別して,(1)社会的相互作用(実験者や被分与者との遊び)をどの程度楽しんだか,(2)迷路遊びをどの程度熱心にしたか,(3)被分与者が困窮(分与)を訴えたとき被分与者の方を見たか,何か言ったか,(4)分与があったか否か,であった。以上の依存変数のうち主要なものとして(4)について筒述する。最も多く分与行動がみられたのは「中立モデル群で動機的コスト低」の場合であった。他の2群では分与行動はあまりみられなかった。以上のことから,この程の実験事態ではモデリング効果よりも動機的コスト効果の方が優位のように思われる。しかし上記依存変数の(2)や(3)等においては、実験要因の交互作用が認められる。幼稚園教師による行動評定についても資料を収集した。
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