研究概要 |
本研究は英語に甚だ多い外来語と本来語との相関関係を明確な方法論に基づいて研究することを目的とした。 1.拙稿「Havelok the Daneの色彩語」(法文学部紀要(『人文学科論集』第35号,1992)はHavelok the Daneという具体的な作品を取り上げて中英語期におけるる日常卑近な色彩語の織りなす英彙の構造を明らかにしながら、従来の注釈、語彙集、ひいてはOEDの誤りをも指摘した。この研究は、英語における外来語彙研究の副産物であるといえよう。 2.L.P.スミス(Logan Pearsal Smith)はThe English Language(1956)を著して語彙と思想との相関関係を考察し、英語の語彙と近代思想とが密接な相関関係にあることを明らかにした。スミスが述べていることを敷衍し、F.ベーコンの、The Advancement of Learnning(『学問の進歩』)(1605)を初例とする借用語、新造語を分析することにより、ベーコンが近代科学思想にどれほど貢献したかを語彙の面から具体的に明らかにしようとしたのが拙稿「F.ベーコンの想思と語彙」(成果報告書所載)である。 3.三輪伸春(編)『小林智賀平「Havelokにおけるshe」』(法文語部紀要『人文学科論集』第37号,1993)は、外来語彙の研究を、形態、文法変化にまで発展させようとするための試論である。 4.本研究により英語における外来語の語彙変化、意味変化の諸相をかなり明らかにしえた。そこで最後に、英語における外来語研究の一般的な方法を明らかにしたのが「サピア、ヴァルトブルグと英語の語彙史研究」(成果報告書所載)である。この研究は、一般言語で得られた研究成果を英語史の語彙史研究に取り入れ、英語史の語彙史研究をより普遍的な視点から考察することを可能にしようとする試みである。
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