研究概要 |
本研究は英語に甚だ多い外来語と本来語との相関関係を明確な方法論に基づいて研究することを目的とする。 1.L.P.スミス(Logan Pearsal Smith)はThe English Language(1956)を著して語彙と思想との相関関係を考察し、英語の語彙と近代思想とが密接な相関関係にあることを明らかにした。スミスが述べていることを敷衍し、F.ベ-コンの、The Advancement of Learnning(『学問の進歩』)(1605)を初例とする借用語、新造語を分析したのが拙稿「F.ベ-コンの思想と語彙」(近刊)である。 2.拙稿「借用語dangerの意味変化」(法文学部紀要(『人文学科論集』第34号,1991)はイエスペルセン(1909),chap.5,§113)の示唆に基づき、日常卑近な単語となっている外来語dangerに潜む、意味変化の過程を究明し,ひいては英語史における外来語の意味変化のひとつの特性を明らかにしようとしたものである。 3.本来語である英語対外国語であるフランス語(とラテン語)という英語の二重構造性・二重階層性(double language)という視点は英語史を研究する際には記憶に留めておかなければならない。英語の二重構造性という特殊な事情によってのみ生じることのできた語彙変化の例が、フランス語からの借用語niceの意味・用法の変化にみられる(法文学部紀要『人文学科論集』第33号「意味変化に与える音韻・形態の影響ー借用語niceの意味変化を中心にー」参照)。借用語niceの意味変化は、英語二重構造性を考慮にいれて初めて理解される意味変化である。
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