研究概要 |
世界で初めての電子・陽子衝突加速器HERAがハンブルクに1993年春完成し,実験が始まった。HERAによる超対祢粒子の探索を狙って,理論的に可能性を檢討し,実験家と共同作業をして檢出の可能性につき論議を重ねた。主な結果は次の通りである。 (1)ボソン・グルーオン融合反応によるスカラートップクォークの発生:これはHERA特有の反応で,対発生が起こる,スカラートップクォークの質量mtが50GeV程度だと発生断面積に0.1pbの程度になることを示した。チャームクォーク発生の寄子ep→ccX→DDXがバックグラウンド過程として非常に大きいが,チャームの横運動量が5GeV以下を除いた事象につきacplamarity分布をとれば,スカラートップクォークの事象を有意に抽出し得ることを示した。 (2)Rバリティを破る共鳴反応によるスカラートップクォークの発生:(1)の反応と異なり単独で創られるので100GeV程度のスカラートップクォーク発生が可能になる。入射電子と核子内クォークが共鳴的にスカラートップクォークを創るので,シグナルは非常に際立ってバックグラウンドから突出して″きれいな″事象として檢出し得ることを見出した。また,Monte Carlo計算によって,スカラートップクォークの質量とRバリティを破る相互作用の強さの許される領域を,発生断面積1pbの條件の下で決定した。 (3)電子・陽子深非弾性散乱に対する輻射補正:DESY及びDYBNAの研究グループとは異なる変数を用い,異なる手法でO(2)の電磁輻射補正を計算し,彼らと一致する答を得た。また結果は放出光子の切断運動量に依存しない筈だ,という一般論を計算により非常に高い精度で確めた。電弱輻射の計算も殆ど完成したので,ジェネレーターHEKTORの作製に着手する段階である。
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