研究概要 |
静的崩壊熱除去系へヒートパイプを応用するための基礎研究として,高熱流束下でのウイックレスヒートパイプの熱輸送特性に関する実験的研究を行ない,以下の知見を得た。(1)蒸発部の沸騰熱伝達率は,気泡の撹乱効果による熱伝達の促進のため,プールに水平におかれた平板に関して得られた従来の相関式と比較すると2〜3倍の値を示す。本研究では,気泡による熱伝達の促進効果を考慮するため,Kutateladzeの相関式に密度比を考慮し,また伝熱面の粗さの影響を考慮した相関式を導出することができた。(2)断熱部の温度は冷却部から還流する過冷却液の影響のため,飽和温度より低めの値を示すことがある。したがって,その温度を流体の代表温度に取ると加熱部の熱伝達率を低く評価するので,蒸発部の液温か圧力の測定が不可欠である。 (3)最大熱輸送量に対する封入率の影響は小さいことが示された。またこれまで公表されている最大熱輸送量の相関式の中で,植田・宮下が提唱した整理式は圧力の依存性も良く評価されており,本実験の最大熱輸送量を±20%の誤差で整理することができ,ヒートパイプの熱設計式として十分な精度を持っていることが分った。(4)凝縮熱伝達は乱流液膜に関して提案された相関式で評価するとNusseltの層流解析解より実験値との一致が良いが,封入率の違いによりばらつきが大きい。精度の高い解析を行なうには対向蒸気流やエントレインメント等の影響を考慮する必要があり,従来の滑らかな凝縮液膜として求めた相関式を用いて評価することは難しいことが明かとなった。この凝縮熱伝達がヒートパイプ内部の熱伝達に関する残された重要な研究課題として指摘された。
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