研究概要 |
2年間に亘る本研究の結果,ヒトサプレッサーT細胞の作用のメカニズムが細部に亘って明らかとなった。その主要な知見は以下の3点に集約される。 (1)サプレッサーT細胞の機能発現にあたっては,サプレッサーT細胞上のLFA-1分子と活性化B細胞上のICAM-1分子との間の直接接触が必要である。 (2)サプレッサーT細胞より抑制シグナルを受けたB細胞ではDNAポリメラーゼαの発現が低下し,サプレッサーT細胞との接触をなくすことによりこのDNAポリメラーゼαの発現は回復する。 (3)サプレッサーT細胞という独立した集団が存在するのではなく,活性化されたT細胞は活性化B細胞に対して一様に抑制効果を発揮する。休止期B細胞は逆にこの“サプレッサーT細胞"によって活性化される。従って,活性化T細胞のへルパー機能・サプレッサー機能を決定するのは,むしろB細胞の活性化の状態であると考えられる。 本研究の成果は,全身性エリテマトーデスなどの多クローン性B細胞の活性化を伴った自己免疫疾患の病態におけるサプレッサーT細胞の機能異常を追究する上で重要な情報を提供するものである。抗リウマチ剤の1つであるロベンザリットがDNAポリメラーゼ活性を阻害することと関連して,サプレッサーT細胞がB細胞のDNAポリメラーゼの発現を抑制するという知見は,今後自己免疫疾患の治療とも関連して注目される必要がある。
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