研究概要 |
昨年度までに、私はマスト細胞の脱顆粒に必須な細胞外からCa^<2+>情報伝達系にアクチンや微小管による制御機構が存在することを明らかにした。これらの知見から、アレルギー反応時のマスト細胞において細胞外からのCa^<2+>流入を制御することが、アレルギーの新しい治療戦略の基礎となる可能性が示唆された。また、その標的となるCa流入経路が容量依存性のCaチャネルである可能性が強く示唆された。そこで本年度は、脱顆粒に関与するCa流入チャネルの同定を試みた。他の細胞における多くの報告から、今回はTRPcチャネルに標的を置いて解析した。 ラットRBL2H3細胞において発現しているTRPcチャネルについてRT-PCRによる解析を行ったところ、TRPc1,TRPc3,TRPc4,TRPc5,TRPc6のmRNA発現が認めら、特にTRPc1とTRPc3の発現が多く認めれた。一方、マウス骨髄から分化誘導したBMMCにおいては、TRPc1,TRPc2,TRPc3,TRPc4,TRPc5,TRPc6,TRPc7のmRNA発現が認められ、TRPc3,TRPc4,TRPc5,TRPc6の発現が多く認められた。RBL2H3とBMMCで共通してmRNA発現が多かったTRPc分子種としてTRPc3に着目し、シークエンスの確認をすると共に、siRNAのオリゴヌクレオチドの構築を行った。得られたオリゴを用いて、RBL2H3細胞への導入を試みた。RBL2H3細胞は遺伝子導入効率が悪いことが知られており、我々が作製したsiRNAオリゴの導入も極めて悪く、導入効率向上のための条件設定を現在模索中である。今後、マスト細胞の抗原刺激によるCa流入チャネルを同定することにより、アクチンや微小管との関係についてさらに解析を進めていきたい。
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