研究概要 |
経常収支の動向と利子率の関係に注目した研究を行った.すなわち,利子率の変化が経常収支に及ぼす影響を代表的個人の最適化行動から理論・実証的に考察した. 先行研究では,貿易財と非貿易財を効用関数に組み入れる事で,実質消費は実質為替レート変化率で調整された実質利子率に影響を受けることが示される.このことは,代表的個人の消費平準化行動が外的変数である実質利子率に影響を受けることを意味し,その影響を考慮した経常収支モデルの予測値はきわめて現実の値に近くなることが選好研究では報告されている.本研究では,上述した最近の経常収支に関する先行研究を踏まえて,特に利子率と異時点間の消費行動の関係に焦点を当てた経常収支の動学モデルの研究を行った. 本研究の具体的なアプローチとしては,国際資本市場での利子率の変動に影響を受ける異時点間消費平準化行動を考え,その行動から導かれる経常収支の変動に注目した利子率の異時点間の消費行動に対する影響とは以下に説明されるものである.現在の国際資本市場での利子率が将来予想される水準よりも高いと考えれば,消費者は現在の消費の一部を国際資本市場で貸し付けることで将来より多くの消費を行うことが可能となる.そのような消費者の異時点間行動を考えれば,経常収支の動向は国際資本市場の利子率と関連があると推測される.そして,異時点間の消費行動と国際株式市場の収益率(先進7カ国の株式市場平均収益率)との関連を経常収支のモデルに組み入れた場合,そのモデルが現実の経常収支の動向を非常に高い精度で予測することが複数の国のデータを用いた分析で判明した.
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