研究分担者 |
SZYMANSKI W. ウィーン大学, 実験物理学科, 準教授
BERNER A. ウィーン大学, 実験物理学科, 準教授
HORVATH H. ウィーン大学, 実験物理学科, 準教授
PREINING O. ウィーン大学, 実験物理学科, 教授
伊藤 正行 京都大学, 原子エネルギー研究所, 助手 (80109066)
笠原 三紀夫 京都大学, 原子エネルギー研究所, 助教授 (80027143)
HORVATH Helmuth Inst. of Experimental Physics, Univ. of Vienna, Assoc. Professor
SZYMANSKI Wladyslaw W. Inst. of Experimental Physics, Univ. of Vienna, Assoc. Professor
A Berner ウィーン大学, 実験物理学科, 準教授
H Horvath ウィーン大学, 実験物理学科, 準教授
O Preining ウィーン大学, 実験物理学科, 教授
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研究概要 |
1.大気エアロゾルの光散乱特性 (1)光透過性物質中に吸収性の炭素成分を含む内部および外部混合状態のエアロゾル粒子の光学特性について理論計算を行い、とくに粒子の単位質量濃度当たりの光減衰係数・光吸収係数は一般に内部混合の場合が大きく、その差は粒径0.2ミクロン以上で著しいことを示した。 (2)ウィーン大学で開発したテレスコープ型光強度計を用い、宇治地区におい2週間にわたって400,550,650nmの3波長についての視程(すなわち光減衰特性)の測定を行い、大気湿度と視程との関係について検討するとともに、この方法が大気エアロゾルの光減衰係数および吸収係数を求めるための簡便法として有用なことを確かめた。なお、この期間のエアロゾルの光吸収効率はかなり大きく燃焼性エアロゾルの含有量が大きいものと推測された。 (3)4極子型セルによって気中に保持した単粒子の光散乱強度の散乱角依存性を測定し、種々の屈折率をもつ粒子に対する理論値との対比によって、粒子の光学特性(屈折率)を決定する方法の可能性について検討し、数値実験によりその可能性を確かめた。 なお、課題3に用いる基礎資料として、ウィーン大学側で行った視程測定データと粒子の性状との関連についての資料を整理中である。 2.大気エアロゾルの特性化 (1)ろ紙(孔径8.0と0.4ミクロン)上に2段分級採取した大気エアロゾル試料についてPIXE法による元素分析法を開発し、これを宇治とウィーンで採取した試料に適用してその特性を比較した。粗大粒子側の元素組成には大きな差異はないが、とくにウィーンの微小エアロゾル粒子中にはいおう・鉛成分が多いことなどを明らかにした。1.でえられた光学特性と元素組成との関連については現在検討中である。 (2)広域的に広がる大陸起源の黄砂について上の方法を適用して、その元素組成を明らかにした、さらにその光学特性との関連についても検討中である。 (3)現在、カスケードインパクターによる粒子の粒径別捕集とその組成分析が進行中であり、さらに全世界的規模での捕集ネットワークなどについても、検討中である。 3.大気エアロゾルの環境影響評価 (1)米国AFGLで開発された大気放射計算モデルであるLOWTRANを用い、粒度分布、光屈折率、濃度の高度分布などの異なる幾つかのエアロゾル条件に対する波長別地表入射エネルギーの試算を行った。なお、これに地表からの長波長輻射エネルギーを加えた計算モデルを付加し、さらに粒度分布、光屈折率、濃度の高度分布などについてのより現実的なデータの整理とこれにもとづく計算モデルの拡張・改良を行っている。 (2)ウィーン大学側では、太陽光の地表入射に対するエアロゾルの直接的減衰効果ならびに凝結核としてのエアロゾルの増加にともなう雲の性状変化による間接的効果を考慮した、地表到達エネルギーを計算する簡易モデルを作成した。このモデルによる試算によれば、産業革命以降の硫酸エアロゾルの増加分は光学厚みとして約0.028であり、これによる日射エネルギー減少分は北半球、全世界ではそれぞれ平均1平方メートル当たり約1.0,0.5Wとなり、これは温暖化ガスによる温暖化効果をかなり相殺するオーダーである。このモデルの信頼性はファクター2程度であるとされているが、(1)の計算結果とも対比してその有用性を検討中である。
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