研究分担者 |
米森 敬三 京都大学, 農学部, 助教授 (10111949)
PARFITT Dan カリフォルニア大学, 果樹園芸学部, 助教授
宇都宮 直樹 近畿大学, 農学部, 教授 (60026622)
中坪 文明 京都大学, 農学部, 助教授 (10027170)
SUBHADRABAND スラナント カセサート大学, 農学部, 教授
SUBHADRABANDHU Suranant Kasetsart Univ., Dept.of Agric., Professor
DAN E. Parfi カリフォルニア大学, 果樹園芸学部, 助教授
SURANANT Sub カセサート大学, 農学部, 教授
DAN E Parfit カリフォルニア大学, 果樹園芸学部, 助教授
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研究概要 |
わが国で古くから栽培されているカキ(Diospiros kaki)は、強い渋味を呈するタンニンを大量に含むという点できわめて特異な果樹であり、その起源については興味ある問題である。しかしながら、約190種存在するといわれているカキ属(Diospyros)の大部分は熱帯あるいは亜熱帯に分布しているため、日本で栽培されているカキが他のカキ属植物と比較した場合にどのような分類学的位置にあるのかは不明な点が多い。本研究では、熱帯あるいは亜熱帯に分布しているカキ属植物と日本の栽培ガキとの類縁性を検討するとともに、カキ属植物の特性であるタンニンに注目し、果実への集積機構およびその化学構造の差異を調べた。 1.これまでの調査でタイ国に存在するとされるカキ属植物60種のうち、22種を採取し、うち19種を同定することができた。これらの種は、D.glandulosa,D.malabarica var.siamensis,D.cauliflora,D.decandra,D.wallichii,D.moIlis,D.rhodocalyx,D.ehretioides,D.areolata,D.toposia,D.undulata var.crateri,D.sumatrana,D.confertiflora,D.variegata,D.castanea,D.montana,D.gracilis,D.pyrrhocarpa,D.buxifoliaであった。このうち、11種は果実を採取することができた。 2.果実を採取できた11種と本学圃場で栽培・維持している温帯性のカキ属植物5種(D.rombifolia,D.oleifera,D.virginiana,D.lotus,D.kaki)について果実中のタンニン細胞の形態および分布状態を調査した。その結果、D.rombifolia,D.mollis,D.wallichii,D.montanaにはタンニン細胞がまったく存在せず、D.ehretioidesもタンニン細胞はほとんど存在しないことがわかった。残りの品種はタンニン細胞の分布程度よって3つのグループに分類され、D.decandra,D.lotus,D.rhodocalyx,D.malabarica var.siamensisは特にタンニン細胞が多く、果肉切片の50〜60%がタンニン細胞で占められていた。 3.果実中のタンニン物質の化学構造をさきほどの種について調査したところ、D.rombifolia,D.mollis,D.wallichii,D.montanaにはタンニンがまったく含まれていないこと、D.ehretioidesのタンニン含量が極端に低いことが確かめられた。さらに、タンニンを含む種についてそのB環がカテコールであるかピロガロールであるかを調査したところ、D.decandra,D.rhodocalyx,D.ehretioidesはほとんどがカテコールであり、逆にD.gracilis,D.lotus,D.oleifera,D.virginiana,D.malabarica var.siamensis,D.areolata,D.glandulosaはピロガロールがほとんどであった。D.kakiについては、渋ガキではピロガロール型が多く、Constantの甘ガキについてはカテコールの割合が多かった。 4.成葉からDNAを抽出することができた温帯性のカキ属植物5種を含む24種のカキ属植物から、PCRによってcpDNAの一部を増幅し、この増幅産物を10種類の制限酵素を用いて切断後、切断断片長のパターンにより、種の類縁関係をNJ法およびUPGM法によって調査した。その結果、D.kaki,D.lotus,D.virginiana,D.ehretioidesはいずれの制限酵素によってもその切断断片は同じパターンを示し、この4種がかなり近い関係にあることが明かとなった。また、D.oleiferaとD.glandulosaもD.kakiと関連が深いことが明かになり、カキの起源を考える上で興味深い結果であった。
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