研究概要 |
1.腫瘍T細胞における増殖阻害とアポトーシス:腫瘍T細胞をT細胞レセプターを介して活性化することによって誘導される増殖阻害においては、まずG1期アレストが起こり、これに引き続きアポトーシスが誘導される。このことは、活性化に伴うG1期アレストは起こるが、アポトーシスを伴うわない変異株が分離できることからも支持された。 2.G1期アレストとG1サイクリン/cdcキナーゼ:腫瘍T細胞では、G1サイクリンの中でも、サイクリンC,C2,C3,Eが発現しており、サイクリンD1は発現していないことが判明した。これらのG1サイクリンの中では、サイクリンEが細胞周期に伴って、顕著にその発現を変化させた。これらと会合しているcdc2系キナーゼにおいては、cdc2および、cdk2両者とも細胞周期に伴って変動した。活性化に伴う増殖阻害が誘導されると、G1サイクリンのうち、サイクリンE,D3およびcdk2キナーゼのmRNAが顕著に減少し、D2は逆に上昇した。これらの変化が、G1アレストを引き起こすと考えられ、サイクリンE,D3,cdk2を恒常的に高発現した場合増殖阻害が起こらないか調べるため、これら遺伝子の導入T細胞株およびこれらG1サイクリンに対する抗体も作製したので今後解析する予定である。 3.活性化によるアポトーシスとFas抗原によるアポトーシス:Fas抗原を抗Fas抗体で刺激することによりアポトーシスが誘導されるが、腫瘍T細胞で活性化されることによって起こる増殖阻害、アポトーシスとの関係を調べるためFas抗原を発現させた腫瘍T細胞を作製した。T細胞レセプターを介する刺激によるアポトーシスは、G1アレストに続いて起こり、サイクロスポリンAで阻害されるが、Fas抗原を介して誘導されるアポトーシスは細胞周期に依存せず、サイクロスポリンAによっても阻害されず、この両者のアポトーシスが異なる機序で誘導されていることが判明した。
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