研究概要 |
モルモットを使用し,タンパク分解酵素灌流法により分離肝細胞を作成した。分離肝細胞を37℃で2時間培養したのち,Fura-2AMを添加し,さらに40分間培養した。ついで細胞外のFura-2AMを洗浄したのち,日本分光社のCAF-100 Ca^<2+> analyzerを使用して,励起波長340nmおよび380nm,蛍光波長500nmにおける蛍光強度比により,静止期肝細胞内Ca^<2+>濃度を測定した。ついで,揮発性吸入麻酔薬を注入して,同様の方法で肝細胞内Ca^<2+>濃度の測定をおこなった。また,トリパンブルー染色を,肝細胞分離後,Fura-2AM添加後,揮発性吸入麻酔薬注入後におこない,肝細胞の生存率を評価した。 平成4年度は,静止期肝細胞内Ca^<2+>濃度の測定法が確率し,その濃度は約150nMであることがわかった。平成5年および6年度は,揮発性吸入麻酔薬のハロセン,イソフルラン,セボフルランを添加し,肝細胞内Ca^<2+>濃度の測定をおこなった。その結果,ハロセンの添加により,肝細胞内Ca^<2+>濃度はハロセン濃度依存性に増加し,肝細胞生存率はハロセン濃度依存性に低下した。つまり,ハロセンによって肝細胞内Ca^<2+>濃度は上昇し,しかも,その上昇と肝細胞生存率の低下には相関関係がみられ,ハロセン濃度依存性に肝障害の生じることが明らかになった。つぎに,この原因を明らかにするため,Ca^<2+>無添加の培養液を用いて,上記と同様の実験をおこなった。その結果,肝細胞内Ca^<2+>濃度,肝細胞生存率はハロセン濃度依存性に低下した。これらより,ハロセンによる肝細胞内Ca^<2+>濃度の上昇は,肝細胞膜がハロセンにより障害を受けたために生じることが明らかになった。さらに,イソフルランおよびセボフルランを添加した場合も,ハロセンと同様に肝細胞内Ca^<2+>濃度は添加した吸入麻酔薬の濃度依存性に上昇した。
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